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AP 午後 システムアーキテクチャ[R3春]

     

 IoT技術を活用した駐車場管理システムに関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

 K社は,大都市圏を中心に約10万台分の時間貸し駐車場(以下,駐車場という)を所有する駐車場運営会社である。K社が所有する駐車場の“満車”,“空車”の状況や課金状況などは,K社が構築した駐車場管理システムで管理している。K社では,5年後には所有する駐車場を約20万台分に拡大する計画に加え,新規事業の拡大や顧客サービスの向上策を検討することになった。
 K社の経営企画部で,顧客サービスの向上策を検討した結果,その一つとして,駐車場の利用状況を表示するスマートフォン向けアプリケーションソフトウェア(以下,駐車場アプリという)を開発することになった。

 

〔駐車場管理システムと駐車場アプリの仕様の検討〕
 経営企画部のLさんは,駐車場アプリを実現するために,既存の駐車場管理システムを拡張することを検討した。拡張する機能仕様とシステム要件の案の一部を表1に,駐車場アプリの仕様案の一部を表2に示す。

表1 拡張する機能仕様とシステム要件の案(一部)

項番 機能仕様とシステム要件
1 駐車場全体の満車・空車情報に加えて,駐車できる個別のスペース(以下,パーキングスロットという)ごとに利用状況を確認できるセンサを設置して,利用状況を表示する。パーキングスロットに設置するセンサはバッテリ給電とする。
2 センサで温度・湿度・気圧などの環境情報を取得して,顧客が閲覧できるようにする。環境情報は,気象データの外販などの新規事業での活用を考慮して,最大5年分蓄積する。このシステムで受信可能なパーキングスロットごとの環境情報データのサイズは,1回当たり最大2,000バイトとする。
3 センサからのデータの蓄積や駐車場アプリへのデータ提供のために,クラウドサービスを利用する。
4 全国47都道府県の主要な駅周辺の駐車場で,最大20万台分のパーキングスロットの情報が扱えるシステムとする。
5 最大1,000の駐車場アプリからの同時アクセスを可能とする。

 

表2 駐車場アプリの仕様案(一部)

項番 仕様の概要
1 駐車場ごと,パーキングスロットごとの利用状況を表示する。
2 駐車場を指定して,問合せ時刻における駐車場全体の利用状況を表示する。
3 パーキングスロットの環境情報を付加情報として表示する。

 

 Lさんは,表1及び表2の案を実現するために,パーキングスロットに設置する,センサを内蔵した通信端末(以下,端末Pという)の仕様を検討した。端末Pの仕様案の一部を表3に示す。

表3 端末Pの仕様案(一部)

項目 仕様の概要
収集する情報とデータサイズ 一つのパーキングスロットの利用状況情報及び環境情報1回当たりに通信するデータサイズは,HTTPの場合2,000バイト
データ送信方式(候補) HTTP,HTTPS(HTTP Over TLS),MQTT(Message Queuing Telemetry Transport),MQTTS(TLSで暗号化したMQTT)
無線通信方式(候補) BLE,LPWA,LTE,Wi-Fi
保存可能なデータ量 2Gバイト
電源方式 バッテリ給電
注記1 各情報には,端末を特定する情報や日時情報などを含む。
注記2 データサイズには,通信プロトコルなどの制御情報を含む。

 

無線通信方式の検討
 Lさんは,表3に示す無線通信方式の候補から,表1の項番4の仕様を実現するために適切な方式を検討した。検討の過程を次に示す。

 LTEは,携帯電話やスマートフォン向けのモバイル通信サービスで利用されている方式であり,全国47都道府県で利用可能である。
 LPWAは,通信速度は  a  が,  b  の通信方式として,IoT向けに低価格のサービスが普及している。LTEを活用したLPWA(以下,LTE-M方式という)を利用すれば,LTEと同様に全国47都道府県で利用可能である。
 Wi-Fi及びBLEは,PCやスマートフォンの通信に利用されることが多い通信方式である。BLEも  b  という特徴がある。しかし,いずれも,端末Pからクラウドサービスにデータを送信するために,別の無線通信や有線回線などと組み合わせる必要がある。

 検討の結果,端末Pの通信方式にはLTE-M方式のLPWA通信サービス(以下,LPWA通信サービスという)を採用することにした。

 

LPWA通信サービスの選択
 端末Pで利用可能なLPWA通信サービスでは,月間に使用できる最大データ通信量に応じて異なる料金プランが用意されていた。候補となったLPWA通信サービスの料金プランを表4に示す。

表4 端末Pで利用可能なLPWA通信サービスの料金プラン

料金プランの名称 月間の最大データ通信量 通信料金(月額)
プランA 100kバイト 150円
プランB 500kバイト 200円
プランC 2,000kバイト 300円
注記1 各料金プランとも,サービスエリアは47都道府県の主要駅周辺をカバーしている。
注記2 消費電力量はいずれのサービスも同程度である。
注記3 各料金プランとも,最大通信速度は上り下りともに1,000kビット/秒である。

 

 表2の各仕様を満足させるために,端末Pからクラウドサービスにデータを送信する頻度は,パーキングスロットの利用状況が変わるごととし,1分以内に送信することを基本とした。ただし,利用状況が長時間変わらない場合も環境情報の更新のために定期的に送信する。なお,1台の端末P当たりの送信回数は,1日30回を上限とした。また,使用するデータ送信方式は,表3の候補からHTTPを用いることにした。この仕様を満たした上で,HTTP通信での通信料金が最も安くなる①LPWA通信サービスの料金プランを選択した。

 

クラウドサービスへのデータ蓄積とサービス提供
 表2の各仕様を実現するために,全てのパーキングスロットに端末Pを設置して,〔LPWA通信サービスの選択〕で検討した頻度でクラウドサービスにデータを送信し,蓄積することにした。
 一方,駐車場アプリからクラウドサービスへのアクセスでは,利用者のスマートフォン1台当たりに必要な帯域は64kビット/秒と想定した。
 結果として,クラウドサービスで使用する②通信帯域は,端末Pからのデータ収集と駐車場アプリ利用者のスマートフォンからのアクセスが同時に発生することを想定して,確保することにした。
 また,クラウドサービスの③保存領域は,5年後に計画されている拡大した駐車場の台数でも,環境情報が最大5年間保管できるように,確保することにした。

 

データ送信方式の検討
 LPWA通信でエラーが発生した期間に,送信すべきデータが欠損することを避けるために,端末Pに送信すべきデータを蓄積し,現在のデータを送信する際に,過去に送信できなかったデータを選別して,同時に送信することにした。送信エラーが続き,送信データ量の累積が  c  を超えないように,新しいデータから順に選んで送信することにした。
 また,〔LPWA通信サービスの選択〕で検討時に想定したHTTPでは端末Pからクラウドサービスに送信するデータが暗号化されないことから,データ送信方式には,表3に示した候補から,④暗号化通信時に最も通信量の少ない方式を採用することにした。

 Lさんは,検討した実現方式を上司に説明し,承認された。

出典:令和3年度春期 問4

設問1 本文中の  a    b  に入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。

 

  1. 遅い
  2. 省電力
  3. 大容量
  4. 速い

 

解答・解説
解答例

 a:ア b:イ

解説
準備中

 

 

設問2 〔LPWA通信サービスの選択〕について,(1),(2)に答えよ。

(1)パーキングスロットの利用状況が変わった際に,端末Pからパーキングスロットの利用状況情報及び環境情報をクラウドサービスにHTTP通信で1分以内に送信するのに必要な最低限の通信速度は何ビット/秒か答えよ。答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めよ。

 

解答・解説
解答例

  266.7

解説
準備中

 

 

(2)本文中の下線1で,選択したLPWA通信サービスの料金プランの名称を,表4の料金プランの名称で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 プランC

解説
準備中

 

 

設問3 〔クラウドサービスへのデータ蓄積とサービス提供〕について,(1),(2)に答えよ。

(1)本文中の下線2で,クラウドサービスのHTTP通信で必要となる最低限の通信帯域を解答群の中から選び,記号で答えよ。なお,対象とする通信は,端末Pからのデータ収集と駐車場アプリ利用者のスマートフォンからのアクセスだけとし,それ以外の通信は無視できるものとする。

 

  1. 26.7Mビット/秒
  2. 53.4Mビット/秒
  3. 64.0Mビット/秒
  4. 90.7Mビット/秒
  5. 117.4Mビット/秒
  6. 128.0Mビット/秒

 

解答・解説
解答例

 

解説
準備中

 

 

(2)本文中の下線③で,環境情報を保存するためにクラウドサービスで必要となる最低限の保存領域は,何Tバイトか答えよ。答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めよ。

 

解答・解説
解答例

 21.9

解説
準備中

 

 

設問4 〔データ送信方式の検討〕について,(1),(2)に答えよ。

(1)本文中の  c  に入れる適切な字句を15字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 月間の最大データ通信量

解説
準備中

 

 

(2)本文中の下線④で採用したデータ送信方式を答えよ。

 

解答・解説
解答例

 MQTTS

解説
準備中

 

 

IPA公開情報

出題趣旨

 近年,IoT 技術やクラウドサービスを活用した様々なアプリケーションソフトウェアが開発されるようになってきており,特に LPWA 通信サービスの利用が普及し始めている。
 本問では,駐車場管理システムへの機能追加を題材として,LPWA 通信サービスなどの IoT 技術やクラウドサービスを用いたシステム構築に関する理解と応用力を問う。

採点講評

 問 4 では,駐車場管理システムへの機能追加を題材に,LPWA 通信サービスなどの IoT 技術やクラウドサービスを用いたシステム構築について出題した。全体として正答率は平均的であった。
 設問 3(1)は,正答率がやや低かった。本問で構築しようとした駐車場管理システムでは,端末 P からのデータ収集と駐車場アプリからのアクセスの両方を考慮する必要がある。計算式自体は複雑ではないので,落ち着いて計算するように心掛けてほしい。
 設問 4(1)は,正答率が低かった。本文中では送信データ量に関する解答を求めているのに対して,通信速度や通信回数に関する解答が散見された。本文をよく読んで解答を導き出すように心掛けてほしい。
 設問 4(2)は,正答率がやや低かった。MQTT や MQTTS は,IoT の普及に伴い利用が進んできた通信プロトコルである。その基本的な仕様や特徴をよく理解してほしい。