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IPA試験は資格ビジネス?

 受験料が値上がりする一方で、資格ビジネスなどと揶揄されることもある資格試験ですが、IT業界で不動の人気の情報処理技術者試験はどうでしょうか。
 情報処理推進機構(IPA)の懐事情について公開されている資料をもとに考察してみました。

はじめに

 情報処理推進機構(IPA)は試験事業で…
 『まったく儲かっていません』

 むしろ最近は、コロナ禍の受験機会減とFE/SGのCBT化で大赤字でした。それを補うために受験料が3割UP(¥5,700→¥7,500)されたのは記憶に新しいところです。

 そもそもIPAは独立行政法人であって営利法人ではないので、利益を追求していません。
 これまでも何度か受験料の値上げがありましたが、基本的に収支がトントンになるように設定されています。
(多少は天下り役員の懐に…ということもひょっとしたらあるのかもしれませんが、仮にあったとしても受験料に跳ねるほどの話ではないでしょう。)

 と、いきなり結論を言ってしまいましたが、せっかくですので、以下にIPA試験のお金周りについて紹介したいと思います。

財務資料をチェック

 こちらが直近のIPA試験事業損益計算書です。


引用元:IPA財務資料

 支出は「業務委託手数料」、収入は「試験手数料収入」が大半を占めているのがわかります。 そこで、ここ十数年の「業務委託手数料」、「試験手数料収入」、「試験事業の純利益」を確認してみました。 その表がこちらです。

データから得られる洞察

 過去の推移から「業務委託手数料」は、CBTに関する費用が多くを占めると推定されます。 というのも、ITパスポートが本格的にCBT化した平成24年度、基本情報・セキュマネがCBT化した令和3年度に跳ね上がっているからです。

 つまり「CBTはかなりカネがかかる」ということです。実際のところ、受験料7,500円の大半は、テストセンター向けの費用に消えていることでしょう。
 基本情報・セキュマネが、2段階試験(午前・午後)から、1段階試験になったのも、コスト削減が主な理由かと思われます。

 “IPA試験全体をCBTに”という声もありますが、コスト面で難しそうです。もしやるとするなら、試験の質を落とすか、受験料をさらに上げるかする必要があるでしょう。

 最近の日経クロステックの記事でも、IPA試験の全面CBT化には予算上の課題があることが取り上げられていました。 

xtech.nikkei.com

さいごに

 とりあえずお伝えしたかったことは、試験を運営する側もいろいろ頑張ってるんだ、ということです。

 私自信、様々な資格・検定試験を受験してきましたが、IT分野において、IPA試験(特に高度区分)は、間違いなく国内最高レベルのコストパフォーマンスです。

 ですので皆さん、IPAの組織努力に感謝しつつ、試験に申し込んだのならちゃんと受験しましょう。もっとも、お布施だけして受験しない方々のおかげで、現状の制度が成り立っているという一面もあるのですが。