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経営法務 令和3年度 第7問

 

 以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
 なお、甲氏は、現在、77 歳であり、配偶者(a)と 2 人の子(b と c)がいる。また、X社は、公開会社ではなく、かつ、大会社ではない。

甲 氏:「私も、77 歳なので、最近、X社の事業承継はどうしたらよいかを考えています。現在、X社の株式は、私が 80 %、10 年前に 70 歳でX社を退職した乙氏が 20 %持っています。a と c は、X社の仕事をしていないので、私が死んだ後は、私の持っているX社の株式はすべて b に相続させたいと考えています。b に相続させるに当たって、注意点はありますか。」

あなた:「甲さんは、X社の株式の他にも、自宅や預貯金の財産をお持ちですので、遺言書を作って、これらの分配方法を定めておくことがよいと思いますが、遺言では、相続人の遺留分に注意する必要があります。」

甲 氏:「分かりました。私の財産は、ほとんどがX社の株式なので、遺留分のことを考えると a と c にもX社の株式を相続させることになるかもしれません。この場合でも、a と c がX社の経営に口を挟むことなく、b が自分の考えに従ってX社を経営してほしいと思っています。何か方法はありますか。」

あなた:「a さんと c さんにもX社の株式を相続させることとする場合には、議決権制限株式を発行し、b さんには普通株式、a さんと c さんには議決権制限株式を相続させるという方法を検討しておくことが考えられます。法律上、 A 。」

甲 氏:「乙氏は最近病気がちのようで、相続が発生するかもしれません。正直、乙氏の相続人の丙氏とはそりが合わないので、丙氏にはX社の株主にはなってもらいたくありません。何か方法はありますか。」

あなた:「相続人に対する売渡請求に関する定款変更を行い、乙氏が死亡した場合には、X社から乙氏の相続人に対し、株式の売渡請求を行うことができるようしておくことが考えられます。 B 。」

 

(設問 1 )会話の中の下線部の「遺留分」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から 3 か月間行使しないときは、時効によって消滅する。
  2. 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じる。
  3. 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく遺留分に関する民法の特例である除外合意、固定合意は、遺留分を有する先代経営者(旧代表者)の推定相続人の過半数が合意の当事者であれば、その効力を生じる。
  4. 配偶者 a の遺留分の額は、遺留分を算定するための財産の価額の 2 分の 1 、子 c の遺留分の額は 4 分の 1 である。

(設問 2 )会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

  1. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行限度の定めはありません
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 1 年以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です
  2. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行済株式総数の2 分の 1 までしか発行できませんので、注意が必要です
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 2 年以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です
  3. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行済株式総数の2 分の 1 までしか発行できませんので、注意が必要です
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 6 か月以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です
  4. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行済株式総数の5 分の 1 までしか発行できませんので、注意が必要です
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 1 年以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です

解答・解説

解答

 1:イ 2:ア

解説

設問1
  1. 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から 3 か月間行使しないときは、時効によって消滅する。
    不適切です。

  2. 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じる。
    適切です。

  3. 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく遺留分に関する民法の特例である除外合意、固定合意は、遺留分を有する先代経営者(旧代表者)の推定相続人の過半数が合意の当事者であれば、その効力を生じる。
    不適切です。

  4. 配偶者 a の遺留分の額は、遺留分を算定するための財産の価額の 2 分の 1 、子 c の遺留分の額は 4 分の 1 である。
    不適切です。

設問2
  1. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行限度の定めはありません
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 1 年以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です

    適切です。

  2. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行済株式総数の2 分の 1 までしか発行できませんので、注意が必要です
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 2 年以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です

    不適切です。

  3. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行済株式総数の2 分の 1 までしか発行できませんので、注意が必要です
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 6 か月以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です

    不適切です。

  4. A: この議決権制限株式は、公開会社ではない会社では、発行済株式総数の5 分の 1 までしか発行できませんので、注意が必要です
    B: この相続人に対する売渡請求は、相続があったことを知った日から 1 年以内に行使しなければなりませんので、注意が必要です

    不適切です。

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