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適性科目 令和5年度 Ⅱ-9

   

 技術者にとって,過去の「失敗事例」は貴重な情報であり,対岸の火事とせず,他山の石として,自らの業務に活かすことは重要である。
 次の事故・事件に関する記述のうち,事実と異なっているものはどれか。

① 2000年,大手乳業企業の低脂肪乳による集団食中毒事件;
 原因は,脱脂粉乳工場での停電復旧後の不適切な処置であった。初期の一部消費者からの苦情に対し,全消費者への速やかな情報開示がされず,結果として製品回収が遅れ被害が拡大した。組織として経営トップの危機管理の甘さがあり,経営トップの責任体制,リーダーシップの欠如などが指摘された。

② 2004年,六本木高層商業ビルでの回転ドアの事故;
 原因は,人(事故は幼児)の挟まれに対する安全制御装置(検知と非常停止)の不適切な設計とその運用管理の不備であった。設計段階において,高層ビルに適した機能追加やデザイン性を優先し,海外オリジナルの軽量設計を軽視して制御安全に頼る設計としていたことなどが指摘された。

③ 2005年,JR西日本福知山線の列車の脱線転覆事故;
 原因は,自動列車停止装置(ATS)が未設置の急カーブ侵入部において,制限速度を大きく超え,ブレーキが遅れたことであった。組織全体で安全を確保する仕組みが構築できていなかった背景として,会社全体で安全最優先の風土が構築できておらず,特に経営層において安全最優先の認識と行動が不十分であったことが指摘された。

④ 2006年,東京都の都営アパートにおける海外メーカ社製のエレベータ事故;
 原因は,保守点検整備を実施した会社が原設計や保守ノウハウを十分に理解していなかったことであった。その結果ゴンドラのケーブルが破断し落下したものである。

⑤ 2012年,中央自動車道笹子トンネルの天井崩落事故;
 原因は,トンネル給排気ダクト用天井のアンカーボルト部の劣化脱落である。建設当時の設計,施工に関する技術不足があり,またその後の保守点検(維持管理)も不十分であった。この事故は,日本国内全体の社会インフラの老朽化と適切な維持管理に対する本格的な取組の契機となった。

 

解答・解説

解答

 ④

解説

① 2000年,大手乳業企業の低脂肪乳による集団食中毒事件;
 原因は,脱脂粉乳工場での停電復旧後の不適切な処置であった。初期の一部消費者からの苦情に対し,全消費者への速やかな情報開示がされず,結果として製品回収が遅れ被害が拡大した。組織として経営トップの危機管理の甘さがあり,経営トップの責任体制,リーダーシップの欠如などが指摘された。

事実の通りです。

② 2004年,六本木高層商業ビルでの回転ドアの事故;
 原因は,人(事故は幼児)の挟まれに対する安全制御装置(検知と非常停止)の不適切な設計とその運用管理の不備であった。設計段階において,高層ビルに適した機能追加やデザイン性を優先し,海外オリジナルの軽量設計を軽視して制御安全に頼る設計としていたことなどが指摘された。

事実の通りです。

③ 2005年,JR西日本福知山線の列車の脱線転覆事故;
 原因は,自動列車停止装置(ATS)が未設置の急カーブ侵入部において,制限速度を大きく超え,ブレーキが遅れたことであった。組織全体で安全を確保する仕組みが構築できていなかった背景として,会社全体で安全最優先の風土が構築できておらず,特に経営層において安全最優先の認識と行動が不十分であったことが指摘された。

事実の通りです。

④ 2006年,東京都の都営アパートにおける海外メーカ社製のエレベータ事故;
 原因は,保守点検整備を実施した会社が原設計や保守ノウハウを十分に理解していなかったことであった。その結果ゴンドラのケーブルが破断し落下したものである。

シンドラー社製エレベータ事故についての事例です。
事故はエレベータ扉が開いたまま上昇して挟まれた高校生が圧死するものでした。
直接原因は保守の不備ですが、間接的には保守委託先にシンドラー社が十分な情報提供をしていなかったことが要因とされています。

⑤ 2012年,中央自動車道笹子トンネルの天井崩落事故;
 原因は,トンネル給排気ダクト用天井のアンカーボルト部の劣化脱落である。建設当時の設計,施工に関する技術不足があり,またその後の保守点検(維持管理)も不十分であった。この事故は,日本国内全体の社会インフラの老朽化と適切な維持管理に対する本格的な取組の契機となった。

事実の通りです。

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