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弁理士 特許・実用新案 R2-9

 

 優先権に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとし、文中に記載した優先権の主張は取り下げられていないものとする。
 また、以下において、「国内優先権」とは、特許法第41条第1項に規定する優先権をいい、「パリ優先権」とは、パリ条約第4条に規定する優先権をいうものとする。

  1. 甲は、発明イについて特許出願Aをし、その5月後に、出願Aを基礎とする国内優先権の主張を伴って、発明イ及び発明ロについて特許出願Bをした。出願Bの出願から5月後に、発明イ、発明ロ及び発明ハについて特許出願Cをする場合、出願Cに係る発明イについての特許法第41条第2項に規定された各規定の適用については、出願Cが出願Aの時にされたものとみなされることはない。
  2. 甲は、特許請求の範囲に発明イ、明細書に発明イ及び発明ロを記載した特許出願Aをした後、出願Aを基礎とする国内優先権の主張を伴って、特許請求の範囲に発明イ及び発明ハ、明細書に発明イ及び発明ハを記載した特許出願Bをした。その後、出願Aは出願公開されることなく取り下げたものとみなされ、出願Bについて出願公開された。乙は、出願Aの出願日後、かつ出願Bの出願日前に、発明ロを特許請求の範囲に記載した特許出願Cをし、この出願Cについて出願審査の請求をした。この場合、出願Cに係る発明ロは、出願Aの明細書に記載された発明ロと同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
  3. 甲は、自らした発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後、出願Aの出願公開前に、乙は、自らした発明イを特許請求の範囲に記載した特許出願Bをした。出願Aの出願公開の後、特許を受ける権利の移転により、出願Aの出願人の名義が乙に変更された。その後、乙は、出願Bを基礎とする国内優先権の主張を伴って、発明イ及び発明ロを特許請求の範囲に記載した特許出願Cをした。
    この場合、出願Cは、出願Aをいわゆる拡大された範囲の先願として特許法第29条の2の規定により拒絶されることはない。
  4. パリ条約の同盟国の国民である甲は、パリ条約の同盟国である国Xにおいて発明イについて最初の特許出願Aをした。出願Aの出願から9月後、出願Aを基礎とするパリ優先権の主張を伴って、日本国において発明イについて特許出願Bをした。甲は、出願Bの手続において、パリ優先権を証明する書類等(特許法第43条第2項に規定する書類又は同条第5項に規定する書面)を、出願Aの出願の日から1年6月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
  5. パリ優先権を証明する書類等(特許法第43条第2項に規定する書類又は同条第5項に規定する書面)を提出せずに同条第6項に規定する通知を受けた者は、この通知の日から2月を経過した後は、当該書類等を特許庁長官に提出することができる場合はない。

解答・解説

解答

 3

解説

  1. 甲は、発明イについて特許出願Aをし、その5月後に、出願Aを基礎とする国内優先権の主張を伴って、発明イ及び発明ロについて特許出願Bをした。出願Bの出願から5月後に、発明イ、発明ロ及び発明ハについて特許出願Cをする場合、出願Cに係る発明イについての特許法第41条第2項に規定された各規定の適用については、出願Cが出願Aの時にされたものとみなされることはない。
    ❌ 特41条1項
    特許を受けようとする者は、次に掲げる場合を除き、その特許出願に係る発明について、その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であつて先にされたもの(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる。ただし、先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その特許出願の際に、その承諾を得ている場合に限る。[特41条1項]

  2. 甲は、特許請求の範囲に発明イ、明細書に発明イ及び発明ロを記載した特許出願Aをした後、出願Aを基礎とする国内優先権の主張を伴って、特許請求の範囲に発明イ及び発明ハ、明細書に発明イ及び発明ハを記載した特許出願Bをした。その後、出願Aは出願公開されることなく取り下げたものとみなされ、出願Bについて出願公開された。乙は、出願Aの出願日後、かつ出願Bの出願日前に、発明ロを特許請求の範囲に記載した特許出願Cをし、この出願Cについて出願審査の請求をした。この場合、出願Cに係る発明ロは、出願Aの明細書に記載された発明ロと同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
    ❌ 特41条3項
    第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願にあつては、外国語書面)に記載された発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(当該先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明(当該先の出願が同項若しくは実用新案法第八条第一項の規定による優先権の主張又は第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項(これらの規定を同法第十一条第一項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に相当するものに限る。)に記載された発明を除く。)については、当該特許出願について特許掲載公報の発行又は出願公開がされた時に当該先の出願について出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたものとみなして、第二十九条の二本文又は同法第三条の二本文の規定を適用する。[特41条3項]

  3. 甲は、自らした発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後、出願Aの出願公開前に、乙は、自らした発明イを特許請求の範囲に記載した特許出願Bをした。出願Aの出願公開の後、特許を受ける権利の移転により、出願Aの出願人の名義が乙に変更された。その後、乙は、出願Bを基礎とする国内優先権の主張を伴って、発明イ及び発明ロを特許請求の範囲に記載した特許出願Cをした。
    この場合、出願Cは、出願Aをいわゆる拡大された範囲の先願として特許法第29条の2の規定により拒絶されることはない。

    ⭕️ 特41条2項
    前項の規定による優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(当該先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明(当該先の出願が同項若しくは実用新案法第八条第一項の規定による優先権の主張又は第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項(これらの規定を同法第十一条第一項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に相当するものに限る。)に記載された発明を除く。)についての第二十九条、第二十九条の二本文、第三十条第一項及び第二項、第三十九条第一項から第四項まで、第六十九条第二項第二号、第七十二条、第七十九条、第八十一条、第八十二条第一項、第百四条(第六十五条第六項(第百八十四条の十第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)並びに第百二十六条第七項(第十七条の二第六項、第百二十条の五第九項及び第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)、同法第七条第三項及び第十七条、意匠法第二十六条、第三十一条第二項及び第三十二条第二項並びに商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二十九条並びに第三十三条の二第一項及び第三十三条の三第一項(これらの規定を同法第六十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす。[特41条2項]

  4. パリ条約の同盟国の国民である甲は、パリ条約の同盟国である国Xにおいて発明イについて最初の特許出願Aをした。出願Aの出願から9月後、出願Aを基礎とするパリ優先権の主張を伴って、日本国において発明イについて特許出願Bをした。甲は、出願Bの手続において、パリ優先権を証明する書類等(特許法第43条第2項に規定する書類又は同条第5項に規定する書面)を、出願Aの出願の日から1年6月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
    ❌ 特43条2項
    前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であつてその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。[特43条2項]

  5. パリ優先権を証明する書類等(特許法第43条第2項に規定する書類又は同条第5項に規定する書面)を提出せずに同条第6項に規定する通知を受けた者は、この通知の日から2月を経過した後は、当該書類等を特許庁長官に提出することができる場合はない。
    ❌ 特43条8項
    第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。[特43条8項]

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