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AP 午後 システム監査[R5春]

     

工場在庫管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 Y社は製造会社であり,国内に5か所の工場を有している。Y社では,コスト削減,製造品質の改善などの生産効率向上の目標達成が求められており,あわせて不正防止を含めた原料の入出庫及び生産実績の管理の観点から,情報の信頼性向上が重要となっている。このような状況を踏まえ,内部監査室長は,工場在庫管理システムを対象に工場での運用状況の有効性についてシステム監査を実施することにした。

〔予備調査の概要〕
 監査担当者が予備調査で入手した情報は,次のとおりである。

(1)工場在庫管理システム及びその関連システムの概要を,図1に示す。


図1 工場在庫管理システム及びその関連システムの概要

 ①工場在庫管理システムは,原料の入庫データ出庫データ,原料仕掛品の在庫データ,仕掛品の工程別の製造実績データ及び工程マスタを有している。また,工程マスタには,仕掛品の各製造工程で消費する原料標準使用量などが登録されている。

 ②原料の入庫データは,購買管理システムの入荷データから入手する。また,製造実績データは,製造工程を制御・管理しているMESの工程実績データから入手する。

 ③工程マスタ,入庫データ・出庫データなどの入力権限は,工場在庫管理システムの個人別の利用者IDとパスワードで制御している。過去の内部監査において,工場の作業現場のPCが利用後もログインされたまま,複数の工場担当者が利用していたことが指摘されていた。

 ④工場在庫管理システムの開発・運用業務は,本社のシステム部が行っている。

 

(2)工場在庫管理システムに関するプロセスの概要は,次のとおりである。

 ①工場担当者が購買管理システムの当日の入荷データをCSVファイルにダウンロードし,件数と内容を確認後に工場在庫管理システムにアップロードすると,入庫データの生成及び在庫データの更新が行われる。工場担当者は,作業実施結果として,作業実施日及びエラーの有無を入庫作業台帳に記録している。

 ②製造で消費された原料の出庫データは,製造実績データ及び工程マスタの原料標準使用量に基づいて自動生成(以下,出庫データ自動生成という)される。このため,実際の出庫実績を工場在庫管理システムに入力する必要はない。また,工程マスタは,目標生産効率を考慮して,適宜,見直しされる。

 ③仕掛品については,MESから日次で受信した工程実績データに基づいて,日次の夜間バッチ処理で,製造実績データ及び在庫データが更新される。

 ④工場では,本社管理部の立会いの下で,原料・仕掛品の実地棚卸が月次で行われている。工場担当者は,保管場所・在庫種別ごとに在庫データを抽出し,実地棚卸リストを出力する。工場担当者は,実地棚卸リストに基づいて実地棚卸を実施し,在庫の差異があった場合には実地棚卸リストに記入し,在庫調整入力を行う。この入力に基づいて,原料の出庫データ及び原料・仕掛品の在庫データの更新が行われる。

 ⑤工場では,工場在庫管理システムから利用者ID,利用者名,権限,ID登録日,最新利用日などの情報を年次で利用者リストに出力し,不要な利用者IDがないか確認している。この確認結果として,不要な利用者IDが発見された場合は,利用者IDが削除されるように利用者リストに追記する。

 

監査手続の作成

 監査担当者が作成した監査手続案を表1に示す。

表1 監査手続案
項番 プロセス 監査手続
1 原料の入庫 ①CSVファイルのアップロードが実行され,実行結果としてエラーの有無が記載されているか入庫作業台帳を確かめる。
2 原料の出庫 ①出庫データ自動生成の基礎となる工程マスタに適切な原料標準使用量が設定されているか確かめる。
3 仕掛品の在庫 ①工程マスタの工程の順番がMESと一致しているか確かめる。
②当日にMESから受信した工程実績データに基づいて,仕掛品の在庫が適切に更新されているか確かめる。
4 実地棚卸 ①実地棚卸リストに実地棚卸結果が適切に記載されているか確かめる。
②実地棚卸で判明した差異が正確に在庫調整入力されているか確かめる。
5 共通(アクセス管理) ①工場内PCを観察し,作業現場のPCが  a  されたままになっていないか確かめる。
②利用者リストを閲覧し,長期間アクセスのない工場担当者を把握し,利用者IDが適切に削除されるように記載されているか確かめる。

 内部監査室長は,表1をレビューし,次のとおり監査担当者に指示した。

(1)表1項番1の①は,  b  を確かめる監査手続である。これとは別に不正リスクを鑑み,アップロードしたCSVファイルと  c  との整合性を確保するためのコントロールに関する追加的な監査手続を作成すること。

(2)表1項番2の①は,出庫データ自動生成では  d  が発生する可能性が高いので,設定される工程マスタの妥当性についても確かめること。

(3)表1項番3の②は,  e  を確かめる監査手続なので,今回の監査目的を 踏まえて実施の要否を検討すること。

(4)表1項番4の①の前提として,  f  に記載された  g  の網羅性が確保されているかについても確かめること。

(5)表1項番4の②は,在庫の改ざんのリスクを踏まえ,差異のなかった  g  について在庫調整入力が行われていないか追加的な監査手続を作成すること。

(6)表1項番5の②は,不要な利用者IDだけでなく,  h  を利用してアクセスしている利用者も検出するための追加的な監査手続を作成すること。

 

出典:令和5年度春期 問11

設問1 〔監査手続の作成〕の  a  に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 ログイン

解説
準備中

 

 

設問2 〔監査手続の作成〕の  b    c  に入れる最も適切な字句の組合せを解答群の中から選び,記号で答えよ。

 

  b c
自動処理の正確性・網羅性 工場在庫管理システムの在庫データ
自動処理の正確性・網羅性 工場在庫管理システムの入庫データ
自動処理の正確性・網羅性 購買管理システムの入荷データ
手作業の正確性・網羅性 工場在庫管理システムの在庫データ
手作業の正確性・網羅性 工場在庫管理システムの入庫データ
手作業の正確性・網羅性 購買管理システムの入荷データ
解答・解説
解答例

 カ

解説
準備中

 

 

設問3 〔監査手続の作成〕の  d  に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。

 

  1. 工程間違い
  2. 在庫の差異
  3. 製造実績の差異
  4. 入庫の差異

解答・解説
解答例

 イ

解説
準備中

 

 

設問4 〔監査手続の作成〕の  e  に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。

 

  1. 自動化統制
  2. 全社統制
  3. 手作業統制
  4. モニタリング
解答・解説
解答例

 ア

解説
準備中

 

 

設問5 〔監査手続の作成〕の  f    h  に入れる適切な字句を,それぞれ10字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 f:実地棚卸リスト
 g:在庫データ
 h:他人の利用者ID

解説
準備中

 

 

IPA公開情報

出題趣旨

 業務プロセスを支援するシステムは,不正リスクに対応した機能・コントロールを組み込むことが求められる。システム監査において,業務プロセスを理解した上で不正リスクを識別し,これに対応したITの機能及びコントロールを評価する監査手続を実施する必要がある。
 本問では,工場在庫管理システムを事例として,不正リスクを想定しながらシステムの運用状況を確かめるための監査手続を検討する能力を問う。

採点講評

 問 11 では,工場在庫管理システムを題材に,業務プロセスを理解した上で,不正リスクを想定しながら監査で確かめるべきコントロール,監査要点に対応する監査手続について出題した。全体として正答率は平均的であった。
 設問 2 は,正答率が低かった。システムの統制は,業務システムで自動化された統制だけでなく,人為的な手作業の統制を組み合わせることが多い。この設問に対応する統制がどちらであるかを読み取って,正答を導き出してほしい。
 設問 5 の h は,正答率がやや低かった。工場の作業現場における PC の利用状況から,利用者 ID がどのように利用されているのかを読み取って,正答を導き出してほしい。