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SM 令和4年度春期 午後Ⅰ 問3

   

サービスの移行に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 A社は,一般消費者向けの商品を製造販売している。A社の情報システム部は,現在オンプレミスで販売システムを運用している。販売システムは,社外の一般消費者及びA社営業部の営業部員に,販売サービスとして提供されている。一般消費者は,インターネットを使って販売サービスを利用し,A社商品の検索と注文を行う。営業部員は,A社社内のPCを使って販売サービスを利用し,商品の新規登録・削除及び商品の価格変更を行う。

〔サービス移行の検討〕
 ハードウェアの保守期限切れに伴い,オンプレミスで運用してきた販売システムを2023年4月に更改する。更改後の販売システムは,オンプレミス,又はクラウドサービス事業者のB社が提供するPaaSのどちらかを採用し,現行販売システムのアプリケーションソフトウェア(以下,販売アプリという)を移行する。情報システム部のITサービスマネージャのC氏は,販売システムの移行先をどちらにするか比較検討し,社内の会議で提案することになった。
 なお,A社では,事業構造改革に伴うシステム統廃合を2027年度末までに完遂させる予定があるので,更改後の販売システムのライフサイクルを5年間とした。
 なサービス移行の提案に当たって,C氏は次の方針で臨むことにした。

・現行の販売サービスのサービスレベル目標を継続する。

・5年間のサービス需要の見通しを考慮する。

・候補案ごとの5年間の費用を比較し,費用を抑える。

 

 現行の販売サービスのサービスレベル目標(抜粋)は,表1のとおりである。

表1 現行の販売サービスのサービスレベル目標(抜粋)

〔オンプレミス案の検討〕
 オンプレミスの場合,自社で新たなハードウェアを調達する。また,サービスの運用については,現行システムの要員体制で臨む。容量・能力については,性能のサービスレベル目標を達成する必要がある。そこで,営業部から入手した今後5年間のサービス需要予測に基づき,トランザクション処理量の見通しを算出したところ,表2のとおりであった。

表2 トランザクション処理量の見通し

 C氏は,表2のトランザクション処理量でサービスレベル目標を達成するために必要な費用を算出した。現行の販売システムの費用をベースに算出したオンプレミス費用の見通しを表3に示す。なお,ハードウェアはリース契約で調達し,月額で費用が発生する。

表3 オンプレミス費用の見通し

PaaS案の検討
 次に,C氏は,B社からPaaSのサービスカタログを入手し,PaaS案の検討を開始した。PaaSのサービスカタログの内容は,表4のとおりである。

表4 PaaSのサービスカタログの内容

 C氏は,表4から詳細調査が必要な内容を洗い出し,B社に質問し,場合によっては調整することとした。

(1)販売サービスのサービスレベル目標との関連
 C氏は,販売アプリをB社PaaSに移行した場合,販売サービスのサービスレベル目標が達成できるかどうかを調査した。“サービス時間”に関連した懸念事項があるので,(ア)サービス可用性について,B社に詳細を問い合わせた。また,“インシデント発生時のサービス回復時間”については,このままでは,(イ)PaaSに障害が発生したときにサービスレベル目標を達成できないおそれがあると考え,B社と調整することにした。
 なお,性能に関しては,表2のトランザクション処理量の見通しに従ってサービスレベル目標が達成できるように,B社と契約することにした。

(2)データセンタ内のバックアップデータの取得方法
 過去に他社で,ホスティングサービスにおける単一のハードウェア障害に起因して,バックアップデータの復元ができないというトラブルがあった。この事例では,バックアップデータの取得場所を本番データと同一の機器としていたので,バックアップデータの消失事象が発生した。C氏は,同様の事象が発生しないようにするため,本番データがあるデータセンタ内のバックアップデータの取得場所について,(ウ)B社に問い合わせることにした。

(3)解約時のデータの取扱い
 C氏は,更改後の販売システムが5年を経過した後,PaaSの利用を終了した場合にデータが消去されることを確認した。B社がデータを消去する前の取扱いについて,(エ)B社に確認すべき事項を整理し,問い合わせることにした。

 

 C氏は,B社からの回答及び調整の結果,販売サービスのサービスレベル目標の達成に問題はないと判断し,5年間の費用を算出することとした。B社から提示されたPaaSの年間費用は表5のとおりである。なお,サービス利用に先立って,移行の費用も含めて一時費用として100万円が必要になる。

表5 PaaSの年間費用

候補案の比較
 C氏は,オンプレミス案及びPaaS案の検討から,各案の5年間の総費用を求めた結果,次のように算出された。

・オンプレミス案の5年間の総費用は  a  百万円

・PaaS案の5年間の総費用は  b  百万円

 

 5年間の総費用を抑えられるのは,PaaS案の方であった。

インシデント管理プロセスについての検討
 情報システム部は,PaaS案の採用を決定した。C氏は,表4のサービスレベル目標に基づき,運用担当者と販売サービスのインシデント管理のプロセスについて確認したところ,営業部へのインシデントの連絡について問題点があることが分かった。
 現在,販売サービスでは,サービス利用者に影響するインシデントが発生した場合,情報システム部から営業部に対して,次のようなタイミングで連絡を行っている。

・インシデントの発生時に発生連絡を行う。

・インシデントの解決時に解決連絡を行う。

・インシデントの解決に時間が掛かる場合は,インシデントの解決に向けた進捗状況について経過連絡を行う。

 

 インシデントの連絡については,現行の販売サービスのサービスレベル目標に決められていないが,過去にインシデント発生から解決するまで長時間を要したことを契機に,運用担当者が運用を始めたとのことであった。
 PaaSに障害が発生した場合,障害の解決処理はB社が行う。PaaSの障害がサービス利用者に影響するインシデントの場合,情報システム部は営業部に対してインシデントの解決についての説明責任をもつ。そこで,C氏は,PaaSに障害が発生した場合を想定して,(オ)B社と調整することにした。

設問1 〔PaaS案の検討〕について,(1)〜(4)に答えよ。

 

(1)本文中の下線部(ア)について,確認すべき内容を40字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 B 社が計画停止を実施する何日前に,B 社から A 社に計画停止の案内を行うか。

解説

 ー

 

(2)本文中の下線部(イ)の“サービスレベル目標を達成できないおそれがある”と考えた理由を,40字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 B 社の PaaS が復旧した後の販売アプリの稼働確認時間が確保できないから

解説

 ー

 

(3)本文中の下線部(ウ)について,同様の事象が発生しないようにするため,バックアップデータの取得場所について問い合わせることにした理由を40字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 本番データとバックアップデータが同時に利用できなくなる可能性があるから

解説

 ー

 

(4)本文中の下線部(エ)について,確認すべき事項を35字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 A 社にデータが適切な形で戻されることを確認しておく。

解説

 ー

 

設問2 〔候補案の比較〕について,(1),(2)に答えよ。

 

(1)本文中の  a  に入る内容を,数字で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 3,460

解説

 ー

 

(2)本文中の  b  に入る内容を,数字で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 2,212

解説

 ー

 

設問3 〔インシデント管理プロセスについての検討〕について,本文中の下線(オ)でB社と調整すべき内容を,30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 PaaS 障害対応状況の経過連絡に関する方法とタイミング

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 近年,クラウドサービスを活用したサービス運用が増えている。クラウドサービスを活用するに当たり,クラウドサービスの制約を認識し,利用者に提供するサービスのサービス目標に照らして,サービスの移行を計画する必要がある。
 本問では,インフラ基盤の PaaS への移行を題材として,サービスの移行に関する要求事項の計画及び外部 供給者との調整能力を問う。

採点講評

 問3では,オンプレミスで運用していた販売システムの更改を題材に,PaaSの利用を視野に入れたサービスの移行について出題した。全体として正答率は平均的であった。
 設問 1(1)は,正答率がやや高かった。販売サービスの計画停止を利用者に周知する必要性は,正しく理解されているようであった。
 設問1(2)は,正答率がやや低かった。PaaS に障害が発生して回復したときに,販売サービスが正常に利用できることを確認するなど, A 社による作業時間の確保が必要なことに気付いていないようであった。
 設問 1(4)は,正答率がやや低かった。情報セキュリティ管理の観点からデータを完全に消去することを求める誤答が多かった。データの取扱いについて解答してほしい。
 設問3 は,正答率が平均的であった。解決に時間が掛かる障害の場合,顧客とのコミュニケーション手段として経過連絡が必要で,その方法とタイミングが重要となることについては理解されているようであった。

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