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SM 令和4年度春期 午後Ⅰ 問2

   

容量・能力管理に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。

 F社は,通信販売事業者であり,衣服などの商品をインターネットで検索して購入することが可能なITサービス(以下,Eサービスという)を提供している。Eサービスは,F社が独自に開発・保守を実施するEシステムによって提供されており,F社情報システム部が運用を行っている。Eシステムは,主にトランザクションの処理を行う業務サーバと,各種情報を記録するディスク装置で構成されている。
 Eサービスは,会員登録が必要なサービスで,会員がログインした後に利用が可能となる。Eサービスは,計画停止時間帯を除いて,24時間365日サービスの利用が可能である。毎日18時〜20時がEサービスの業務ピーク(以下,業務ピーク時という)であり,トランザクション量が平日平均値の2倍程度まで増加する傾向にある。また,F社営業部では,会員の獲得に向けた営業活動やタイムセールなどの販売促進のための企画を行っている。特に,毎週土曜日の18時〜20時に実施するタイムセールが好評で,平日平均値の4倍程度のトランザクション量が発生することもある。

容量・能力計画と管理体制
 Eサービスの容量・能力管理は,F社情報システム部のサービス課及び運用課が実施しており,サービス課のG氏がITサービスマネージャとして全体計画の取りまとめを行っている。
 業務サーバの能力は,1秒当たりのトランザクション量(以下,スループットという)をベースに計画する。
 ディスク装置の容量は,格納する次の3種類の情報の情報量をベースに計画する。

・会員基本情報:会員のプロフィールを記録した情報で,会員登録時に作成し,退会時に削除する。

・購入実績情報:会員の商品購入の履歴であり,1回の購入操作につき1レコードが作成される。作成されたレコードは会員基本情報にひも付けられ,会員退会時には購入実績情報も削除される。

・商品基本情報:取り扱う商品の金額,在庫など販売に必要な情報であり,商品ごとに作成する。最大5万点分の商品情報を格納する。

 

 現行のEサービスの容量・能力計画の概要を表1に,また各課の容量・能力管理に関する主な役割を表2に示す。

表1 Eサービスの容量・能力計画の概要

表2 容量・能力管理に関する主な役割

 情報システム部は,Eサービスのサービス運営会議を定期的に開催しており,容量・能力に関する報告と,改善に向けた提案の機会を設けている。会議は毎月中旬に開催し,前月の状況を情報システム部長に報告する。サービス運営会議の議題を,表3に示す。ここで,4月の議題には,今後3年間の容量・能力計画が追加される。

表3 サービス運営会議の議題

容量・能力計画の策定
 G氏は,2021年4月のサービス運営会議に今後3年間の容量・能力計画を提案するために,サービス運営会議の報告内容を事前に運用課とサービス課から入手した。その内容は次のとおりであった。

・2021年3月の容量・能力監視の結果は全て正常,インシデントの発生なし

・2021年3月のスループットの月間最大値が15TPS

・2021年3月末時点の会員数は8,000人

 

 G氏は,今後3年間の会員数の計画を営業部に問い合わせ,年間10%の割合で増加する見通しであることを確認した。また,スループットの最大値も会員数に比例して増加傾向にあったので,今後も同様の割合で増加する見通しを立て,業務サーバの容量・能力計画を作成した。
 G氏がまとめた今後3年間の会員数と最大スループットの見通しを表4に示す。ここで,会員数には3月末時点の人数,最大スループットには3月の月間最大値を用いることとする。

表4 今後3年間の会員数と最大スループットの見通し

 表4の見通しから,G氏は,今後3年間は業務サーバの容量・能力変更の必要がないことを確認した。
 次に,G氏は,ディスク装置の容量・能力計画に着手した。事前に入手した情報だけでは,(ア)ディスク装置の使用率を算出するには不十分だったので,必要な情報を収集した。その結果,今後3年間はディスク装置の容量・能力変更の必要がないことを確認した。なお,商品情報は今後3年間で5万点にならないことを確認した。

販売ビッグデータ分析機能の開発
 営業部は,情報システム部に販売ビッグデータ分析機能(以下,新機能という)の開発を要請した。要請の内容は,“Eサービスの利用者は,購入準備のためにEサービスの商品掲載ページを見て回る。このようなウィンドウショッピング的な行動と購入履歴を分析して,新商品の開発につなげたい。”ということであった。
 新機能の概要は次のとおりである。

・会員がEサービスを使って商品を検索するときに閲覧したWebページを閲覧履歴情報として,Eシステムのディスク装置に記録する。なお,閲覧履歴情報は,閲覧したWebサイト1ページ当たり0.1Mバイトである。

・新機能で,閲覧履歴情報や購入実績情報などの分析を行う。

 

 新機能で閲覧履歴情報を取得する運用は,2021年10月1日から開始され,それに合わせG氏は,表1に閲覧履歴情報を追加し,格納する情報を4種類とした。さらに,Eシステムのディスク装置増強の必要性を判断するために,会員の(イ)閲覧履歴情報のデータ量予測に必要な情報を入手した。

新商品の販売計画
 営業部では,新機能の稼働開始後に,購入実績情報と閲覧履歴情報から顧客をパターン別に分類して分析を行った。その結果,次の事柄を導き出した。

・商品カテゴリごとに顧客層が異なり,業務ピーク時のほかにも閲覧されやすい曜日や時間帯があって,それぞれが異なること。

・商品カテゴリごとにある商品に集中して閲覧と購入をしている傾向が見られ,この傾向を参考にして新商品を開発して販売することで,F社の売上の増加が期待できること。

・業務ピーク時以外の時間帯にタイムセールを開催すると,業務ピーク時からタイムセールの曜日,時間帯にトランザクション量がシフトする傾向にあること。

 

 営業部は,新商品の開発と販売に関する社内調整を行い,2022年4月から新商品の販売を開始する計画にした。営業部では,2022年度から会員数が前年度に比べて20%増加し,次年度以降も同様のペースで会員数が伸び続けると想定して会員数の見通しを修正した。G氏は,営業部から新商品の販売計画の説明を受けて,2022年1月に容量・能力計画の見直しを行った。G氏は,スループットの最大値も会員数に比例させて,2022年度以降の容量・能力計画の見直しを行ったところ,業務サーバの容量・能力計画に変更が必要となったので,(ウ)業務サーバの能力増強を実施することにした。
 さらに,新商品の販売開始後の需要動向によっては,閲覧履歴情報の急増が予測されることから,G氏はディスク装置の容量の増強の必要性について検討した。また,ディスク装置の容量不足が発生する前に容量の増強ができるようにする必要があることから,表1のEサービスの容量・能力計画についても,(エ)内容を見直すこととした。なお,G氏は営業部に商品情報について確認したところ,“既存の商品を含め,今後3年間で5万点には達しない”とのことであった。

新商品の販売開始
 2022年4月から新商品の販売を開始したところ,4月第1土曜日の業務ピーク時には,予想以上にトランザクションが集中し,過去のスループットの最大値を更新した。G氏は,このままではインシデントが発生する可能性があり,暫定対応が必要であると考え,営業部とともにトランザクション集中の対策を検討することにした。

 営業部では,新機能による分析結果に基づき,暫定対応として(オ)トランザクションを分散させる方策を提案した。G氏は,営業部の方策は,タイムセールの開催頻度が増えるものの,会員にとって利便性を大きく損なわないことから,営業部とともに詳細の検討に入った。

設問1 〔容量・能力計画と管理体制〕について表1中の  a  に入れる適切な数値を求めよ。

 

解答・解説
解答例

 25

解説

 ー

 

設問2 〔容量・能力計画の策定〕の本文中の下線(ア)について,ディスク装置の使用率を算出するために必要な情報とは何か。15字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 会員 1 人当たりの平均購入回数

解説

 ー

 

設問3 〔販売ビッグデータ分析機能の開発〕の本文中の下線(イ)について閲覧履歴情報のデータ量予測に必要な情報とは何か。30字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 会員が閲覧する 1 か月当たりの総ページ数

解説

 ー

 

設問4 〔新商品の販売計画〕について,1),(2)に答えよ。

 

(1)本文中の下線(ウ)について,業務サーバの能力増強が必要と考えた理由を,40字以内で具体的に述べよ。

 

解答・解説
解答例

 2024 年 3 月末までに最大スループットが基準値の 20TPS を超えるから

解説

 ー

 

(2)本文中の下線(エ)について,表1に関して見直しを行う内容を30字以内で述べよ。ただし,ディスク装置の容量の増強は除くこと。

 

解答・解説
解答例

 ディスク装置の基準値を現在の設定値より低い値に変更する。

解説

 ー

 

設問5 〔新商品の販売開始〕の本文中の下線(オ)について,営業部が考えたトランザクションを分散させる方策の内容を40字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 商品カテゴリごとにタイムセールの曜日や時間帯を分散させる。

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 容量・能力管理では,サービスの要求事項に従い,サービスのパフォーマンスを適正な容量・能力で提供する。
 本問では,業務サーバ能力の検討,ディスク装置容量の検討,業務特性に応じてピーク時の需要を分散する方策の検討などの活動に関して,IT サービスマネージャに要求される容量・能力管理の能力を問う。

採点講評

 問2では,インターネットを利用した通信販売サービスを題材に,業務サーバの能力及びディスク装置の容量の管理について出題した。全体として正答率は平均的であった。
 設問3 は,正答率がやや低かった。新たに取得する情報のデータ量の予測するために,どのようなデータを取得すべきかを理解して解答してほしい。
 設問 4(1)は,正答率がやや高かった。業務サーバの能力増強が必要と考えた理由を,売上の増加に伴う計画値の見直しだけでなく, 見直しに伴い基準値を超える見通しとなった旨を具体的に言及した解答が多かった。 設問4(2) は,正答率が低かった。情報量の急増が予測される中,ディスク装置の容量不足を早期に検知し,容量不足が発生する前に容量を増加するという観点から,ディスク装置の基準値設定に着目して正答を導き出してほしい。
 設問 5 は,正答率が平均的であった。トランザクションの分散の手段として,単にタイムセールをピーク時間帯以外に実施するという解答が多かった。 データ分析の結果を踏まえて解答してほしい。

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