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SM 令和4年度春期 午後Ⅰ 問1

   

サービスレベル管理に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

 Q社は,事務用品を製造販売する中堅企業である。Q社のシステム部は,受注システムのオンライン処理を受注業務サービスとして提供している。サービスの利用者は,Q社の営業部の営業担当者である。利用者は,受注業務サービスを利用して商品の受注業務を行う。Q社の営業日は,月曜日から土曜日までである。サービスの提供時間は,営業日の7時から23時までである。
 受注システムが稼働する業務サーバのハードウェアの保守期限切れに伴い,システム部は受注システムを再構築し,新受注業務サービス(以下,新サービスという)を2022年3月から利用者に提供することになった。再構築では,業務サーバを更改し,受注システムのアプリケーションソフトウェア(以下,Tアプリという)を更改後の業務サーバに移行する。再構築前の受注システムは,システム障害の発生によって,利用者がサービスを利用できない状況になることがあった。新サービスでは,サービス可用性と保守性の向上が求められている。

サービスレベル目標の設定
 Q社では,今まで社内に提供するサービスについてはサービスレベル目標を定めていなかったが,新サービスではサービスレベル目標を明確にし,営業部とシステム部との間でSLAを合意することになった。
 システム部のITサービスマネージャU氏は,新サービスのSLA案の作成に当たって,主要なサービスレベル項目のサービスレベル目標について,営業部の要望を基にした目標値を作成した。U氏は,サービスレベル目標の実績値を測定する作業負荷には問題がないことをシステム部内で確認後,営業部とシステム部との間で,新サービス開始後1か月間における仮のサービスレベル目標を合意した。また,(ア)正式なサービスレベル目標は,1か月間のサービスレベル目標の達成状況を評価後に決定することとなった。
 合意した主要なサービスレベル目標(仮)を表1に示す。

表1 主要なサービスレベル目標(仮)

 2022年3月の1か月間のサービスレベル目標(仮)の達成状況は,翌月にシステム部から営業部に報告される。
 合意した1か月間のサービス時間の目標値の合計(以下,計画サービス時間という)は,2022年3月の場合,  a  時間となる。ここで,2022年3月の営業日の日数は27日である。また,サービス稼働率は,次の計算式で算出する。

(計画サービス時間計画外の停止時間の合計)計画サービス時間

 新サービスには表2に示す複数の組織が関わっている。

表2 新サービスに関わる組織

 R社は再構築前のTアプリのソフトウェア保守を,S社は受注システムのハードウェア保守を担当している。システム部は,R社及びS社(以下,それぞれをサプライヤーという)と,サービスに関する取決めを契約に定めている。これらの契約は,新サービスの開始後も継続することとしている。システム部とR社との主な契約事項を表3に,システム部とS社との主な契約事項を表4に示す。

表3 システム部とR社との主な契約事項

表4 システム部とS社との主な契約事項

 なお,再構築後の受注システムのハードウェアには,新サービスの性能要件を満たす必要があることから,S社推奨の新製品を採用した。

新サービスの開始から1か月間の状況
 システム部は,2022年3月から新サービスを開始し,表1のサービスレベル目標(仮)の実績値(以下,初回実績値という)を測定した。新サービスはオンライン応答時間のサービスレベル目標を達成していたが,2022年3月に3回インシデントが発生し,計画外にサービスが停止した。計画外のサービス停止の状況を表5に示す。

表5 3月の計画外のサービス停止状況

 U氏は,初回実績値が表1に示すサービスレベル目標を達成できているかどうかを評価し,未達成の場合は改善策を検討することとした。
 U氏が初回実績値を算出したところ,サービス稼働率は  b  %となった。

3月4日のサービス停止の詳細
 表5の3月4日の計画外の停止時間は長時間となった。U氏が当該インシデントの回復手順を確認したところ,表6のとおりであった。ここで,計画外の停止時間は,インシデントの回復手順の所要時間合計である。

表6 3月4日のインシデントの回復手順

 U氏は,当該インシデントの問題と同じ磁気ディスク装置の故障によるインシデントが再発した場合に,現状のままではサービスレベル目標を達成できないと考えた。そこで,U氏は,表6のそれぞれの手順の所要時間に焦点を当て,(イ)一つの手順の改善を行うことによって,サービスレベル目標を達成できると考えた。そこで,U氏は,(ウ)サプライヤーとの契約内容を調整することとした。

システム部内の振り返り
 システム部は,2022年3月のサービスレベル目標(仮)の達成状況,インシデントへの対応状況について部内レビューを行った。部内レビューでは,3月4日のインシデントにおいて,サプライヤーとの契約内容の調整以外にも,計画外の停止時間を長時間化させない対策を取るべき手順があると指摘があった。そこで,U氏は,(エ)インシデントの検出に着目して調査を行うことにした。

設問1 〔サービスレベル目標の設定〕について,(1),(2)に答えよ。

 

(1)本文中の下線(ア)で,正式なサービスレベル目標は,1か月後に決定する方式としている。サービス提供者としてのシステム部の立場から,このような決定方式とした目的について,30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 ・現実的に達成可能な SLA を,営業部と合意するため
 ・現実的に達成可能な SLA であることを確認するため
 ・目標値を実現する上で,改善が必要かを確認するため

解説

 ー

 

(2)  a  の値を整数で求めよ。

 

解答・解説
解答例

 427

解説

 ー

 

設問2 〔新サービスの開始から1か月間の状況〕について,  b  のサービス稼働率を%単位で求め,小数第2位を四捨五入して小数第1位まで答えよ。ここで,2022年3月の営業日の日数は27日である。

 

解答・解説
解答例

 99.2

解説

 ー

 

設問3 〔3月4日のサービス停止の詳細]について,(1),(2)に答えよ。

 

(1)本文中の下線(イ)について,U氏が改善を行うことにした手順を表6から一つ選び,項番で答えよ。また,その理由を25字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 項番:3
 理由:・30 分以上短縮できる可能性があるから
    ・手順の中で最も時間を要しているから

解説

 ー

 

(2)本文中の下線(ウ)について,調整すべき内容を30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 表 4 の項番 2 の 90 分以内を 60 分以内に変更する。

解説

 ー

 

設問4 〔システム部内の振り返り〕について,本文中の下線(エ)で,U氏がインシデントの検出に着目したのはなぜか。考えられる理由を30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 ・インシデントの検出に 20 分掛かったから
 ・アラート検知が営業部の連絡より 15 分遅いから

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 新規に SLA を設定する場合,サービスレベル目標を仮設定し,サービス目標値に対する達成度を測定し,サービス目標値が達成可能か,又は調整が必要かを確認する必要がある。
 本問では,既存システムの再構築を行う事例の中で,SLA の設定,サービスレベル目標に対する達成状況の確認,外部供給者との調整を通じて,サービスレベル管理の実務能力を問う。

採点講評

 問1 問1では,新規に SLA を合意する際のサービスレベル目標の決定方式,サービスレベル目標に対する達成状況の確認,改善のための調整を題材に, サービスレベル管理について出題した。全体として正答率は平均的であった。
 設問 1(1)は,正答率がやや低かった。正式決定までの期間確保, 現行でサービスレベル目標を定めていないなどを記述した誤答が多かった。サービスレベル目標の達成を確実にしていく観点から,目標値を仮設定してサービス提供の初期に達成状況を確認していく方式をとっていることについて,認識してほしい。
 設問 3(1)の理由は,正答率がやや低かった。時間を要している点に留まった解答が多かった。サービスレベ ル目標を達成するための定量的な改善効果も踏まえて解答してほしい。
 設問 3(2)は,正答率が平均的であった。変更対象となるサプライヤとの契約事項に関する解答が多く,契約の変更内容まで記述していない解答が散見された。サービスレベル目標値を達成可能とするためには,顧客との SLA と整合するように,外部供給者との契約内容を具体的に調整することを心掛けてほしい。

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