旅館のIT活用による業務改革に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
B旅館は,N県にある山海の資源に恵まれたT温泉にある,創業100年を超える従業員50名程度の旅館である。B旅館は,歴史ある建物や独立性の高い居室によって,伝統と格式を感じさせる雰囲気が特長である。
B旅館は,“お客様と編む時間,一歩先のおもてなし体験”をコンセプトとし,教育が行き届いた仲居を中心とした利用客に寄り添った接客サービスによって,リピータや口コミ経由の利用客を獲得してきた。特に,予約時に聞き取った情報や接客時の会話から得た情報(以下,接客情報という)を用いて,担当する利用客のニーズや好み,宿泊目的などを仲居が把握し,丁寧な気遣いやサプライズ演出を行うことが利用客の顧客体験価値(UX)の向上に大きな貢献をしてきた。接客情報は宿泊するたびに増えていくので,常連客ほど高いUXを得ている。
〔B旅館における業務改革推進の背景〕
ここ数年の感染症の流行による観光客の減少によって,B旅館の客室稼働率(以下,稼働率という)が急激に落ち込んだ。売上げが著しく低下したので,経営を維持するためには仲居を含めた従業員の削減も行わざるを得なかった。最近は,感染症の流行も落ち着いて観光客数は回復傾向にあり,遠隔地での休暇と就労を組み合わせるワーケーションを推奨する企業も増えている。B旅館は,この変化をビジネスチャンスと捉え,感染症の流行前を超える稼働率を実現したいと考えている。
稼働率の向上に対応するためには,今まで以上に人手が必要となるが,一度削減した従業員の補充は思うように進まず,今後の見通しも立っていない。この状況が継続すると,稼働率の向上という目標が達成できないだけでなく,B旅館の強みが低下してB旅館の経営に大きく影響するおそれがある。
B旅館は,現状の従業員を前提とし,B旅館の強みを更に強化しつつ業務を効率化することによって,稼働率の向上という経営目標を達成するため,ITを活用した業務改革を推進することとした。
〔B旅館の現状〕
B旅館の各業務における現状は次のとおりである。
(1)予約
・フロント係が表計算ソフトで作成した予約台帳で予約情報を管理している。電話予約や旅行予約サイトなど複数の予約チャネルが存在しているが,予約台帳のメンテナンスは手作業なので時間が掛かる上,予約情報の変更などをリアルタイムに管理することができていない。
(2)接客
・仲居は接客情報を他の従業員に連携しなければならないが,他の従業員との情報連携手段は口頭なので時間が掛かり,接客に使える時間が増やせない。
・若手仲居の育成は10年以上の経験を積んだベテラン仲居がOJTを通して行っており,今の育成方法ではノウハウの継承に早くても5年程度掛かる。
・従業員削減の影響によって仲居の業務負荷が高まり,ベテラン仲居が若手仲居を育成する時間がとれなくなっている。
・仲居は接客情報をサービス向上に役立てている。しかし,接客情報にはアレルギーや身体の状況などの要配慮個人情報が含まれ得ることから,管理に際しては利用客の同意を得た上で,情報の取扱いに常に細心の注意を払う必要がある。
(3)清掃
・清掃係が行う客室清掃は,客室の状況によって清掃に掛かる時間が異なるので,予定した時間で清掃が終わらない部屋が出てしまうことがある。逆に,時間が余る清掃係もいるが,他の清掃係の状況が分からず,支援に回ることができない。
(4)マーケティング
・B旅館では,春と秋の行楽シーズンは稼働率が高いが,夏と冬は稼働率が下がる傾向にある。
・営業係が管理する利用後アンケートでは,家族などの同伴者の誕生日や結婚記念日などのライフイベントが宿泊目的であったという回答が多い。しかし,同伴者のライフイベントの情報はB旅館としては蓄積,管理できていない。
・ワーケーションが認められるようになったので,学校が休みの時期に仕事をしながら家族と長期間宿泊したいが,費用は抑えたいという要望が増えている。
〔B旅館のアクションプラン〕
B旅館は,B旅館の現状や従業員の補充状況を踏まえると,経営目標を達成するためには,業務効率化,集客力向上,若手仲居の育成早期化を実現することが必要と考え,次のアクションプランを作成した。
① 業務効率化
・予約情報を一元管理できる予約台帳とすることによって,予約台帳のメンテナンスに掛かっていた時間を削減したり,予約台帳で予約情報の変更をリアルタイムに管理できるようにしたりする。
・接客情報や業務状況を可視化し,全ての従業員で共有することによって,情報連携に要していた時間を削減したり,従業員の空き時間を活用できるようにしたりする。
② 集客力向上
・適切なタイミングで利用客に向けてプロモーションを行う。
・通常より料金を抑えた夏季及び冬季限定の長期滞在家族プランを新設する。
③ 若手仲居の育成早期化
・ベテラン仲居が暗黙知として保有しているノウハウを形式知化し,若手仲居が学習実践できるようにする。
・実践結果とベテラン仲居からのフィードバックを記録して振り返りを行うとともに,自己学習を可能として育成早期化を図る。
〔旅館管理システムの概要〕
B旅館は,これらのアクションプランを実現するために,宿泊業向けのSaaSなどのクラウドサービスを活用して,旅館管理システムを構築することとした。
旅館管理システムの概要を図1に示す。
図1 旅館管理システムの概要
(1)デバイス
・全ての従業員にタブレットとインカムを持たせ,タブレット経由で旅館管理システムにアクセスする。
(2)社内チャット
・従業員は,タブレットを用いて接客情報や業務連絡を社内チャットに登録することができる。
・社内チャットのうち,接客情報は,利用客名や部屋番号などをタグとして登録することによって,顧客管理と連携できる。
・社内チャットのうち,今後の業務に役立ちそうな内容は,ノウハウとしてナレッジベースに連携できる。
(3)ナレッジベース
・従業員が共同で業務ごとのナレッジやノウハウを追加・編集できる。
・OJTに関する実践結果とフィードバックを記録できる。
・蓄積されたナレッジやノウハウからAIによってシーン別の問題を作成し従業員が自己学習することができる。
(4)予約管理
・電話での予約を予約情報として登録できる。
・予約情報の変更や削除ができる。
・提携している旅行予約サイトと双方向に予約情報を連携できる。
(5)顧客管理
・予約管理から,利用客に関する情報を顧客管理に連携できる。
・全ての利用客について,接客情報,予約情報,利用後アンケート結果を顧客情報と関連付けて蓄積し,確認できる。
・顧客情報と関連付けられた予約情報,利用後アンケート結果を自然言語解析することによって,宿泊目的に関する情報を分析できる。
(6)清掃管理
・タブレットから客室清掃の作業結果を報告できる。
(7)情報セキュリティ
・旅館管理システムで扱う情報の特性を踏まえ,情報の漏えい,改ざん,毀損,滅失などへの対策を強化する。
〔従業員からの意見〕
従業員に対して旅館管理システムの機能説明を行ったところ,仲居から,“採用予定のタブレットとインカムは目立ちすぎてB旅館の雰囲気にそぐわない”や“常に館内を歩き回っているので,手を使わずに社内チャットに登録できればより効率的になる”という意見が挙がった。これらの意見に対応するために,インカムとタブレットは目立たないサイズや色を選定するとともに,ある機能を追加して社内チャットの登録を効率化することとした。
設問1 〔B旅館における業務改革推進の背景〕について,B旅館が経営目標を達成するために活用すべき強みは何か。30字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
設問2 〔B旅館のアクションプラン〕について答えよ。
(1)業務効率化が必要となった背景であるB旅館の従業員の補充状況とはどのような状況か。35字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(2)業務効率化によって得られる仲居に関連する時間的なメリットを二つ挙げ,それぞれ20字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(3)長期滞在家族プランを新設する背景となった利用客のニーズを30字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
設問3 〔旅館管理システムの概要〕について答えよ。
(1)社内チャットが仲居の育成早期化に有用である理由を35字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(2)顧客管理において,宿泊目的に関する情報を分析できる機能を実装した目的を35字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(3)客室清掃に関して,タブレットから作業結果を報告できる機能を追加した目的を20字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(4)情報の漏えい,改ざん,毀損,滅失などへの対策を強化する目的を,旅館管理システムで扱う情報の特性を踏まえて20字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
設問4 〔従業員からの意見〕について答えよ。
(1)タブレットとインカムに目立たないサイズや色を選定した狙いを25字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(2)チャットの登録に関して,どのような機能を追加するか。25字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
IPA公開情報
出題趣旨
公開前
採点講評
公開前