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AU 令和3年度秋期 午後Ⅰ 問3

   

結合テストの監査に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。

 産業用機械メーカのC社は,20年以上前にホストコンピュータ上に構築した現行の基幹システム(以下,現行システムという)を刷新するために,現在,システム再構築プロジェクト(以下,当プロジェクトという)を進めている。
 現行システムは,販売管理,生産管理,購買管理の各業務システムから構成されている。現行システムの構築当初は人事給与及び財務会計の業務システムも実装されていたが,これらについては,3年前にオープン系のパッケージシステムへ移行済みである。当プロジェクトは,現行システムを構築したP社に委託し,1年前からオープン系システムとして再構築に取り掛かっている。
 C社監査部は,当プロジェクトの重要性に鑑み,システム部での勤務経験があるD氏が中心となり,これまでにプロジェクト計画段階,要件定義完了段階のシステム監査を実施している。当プロジェクトは,現在,結合テストの終了段階に入っており,監査部は,最終のテスト工程であるシステムテスト開始前に,結合テストの完了評価の適切性について,システム監査を実施することにした。D氏を含む監査部メンバは,当プロジェクトの関係者にヒアリングするとともに,関連資料を閲覧した。

〔工程計画〕
 当プロジェクトは,①要件定義,②設計,③製造/単体テスト,④結合テスト,⑤システムテスト,⑥移行という工程になっている。P社との委託契約は,②設計〜④結合テストは請負契約であり,①要件定義,⑤システムテスト,⑥移行に関しては準委任契約である。
 C社は,業務システムごとの結合テストを完了した後,システムテストにおいて,業務システム全てを連携させたテストとユーザ受入テストを行う計画である。

〔開発体制〕
 当プロジェクトの開発体制は,図1のとおりである。システム部では,現行システムの運用と保守を中心に行ってきたので,新規のシステム開発のノウハウが不足している。そのため,実質的には,要件定義の段階からP社が中心となって開発プロジェクトを進めており,システム部が,P社開発成果物のレビュー・承認,C社利用部門との仕様などの調整を担当している。
 プロジェクト管理については,システム部長がプロジェクトマネージャ(以下,PMという)として全体を統括し,システム企画課がプロジェクト全体の運営事務局(以下,PMOという)として,P社の開発リーダ及びプロジェクト管理チームと連携して,進捗管理,品質管理,課題管理などを行っている。


図1 当プロジェクトの開発体制

〔PMへのヒアリング〕
 監査部が,結合テスト完了評価の実施方法及び実施結果について,PMにヒアリングした結果,次のことが分かった。

(1)P社の各開発チームは,P社のプロジェクト管理チームが作成した結合テスト完了基準に従って,各業務システムの結合テスト完了評価を行い,結合テスト完了評価報告書を作成した。

(2)PMOは,結合テスト完了基準の内容を確認した上で,完了基準未充足の項目がないかどうかを確認したが,特に問題点は見つかっていない。システムテストも引き続きP社の協力を得て実施する予定であり,懸念点はないと考えている。

(3)生産管理システムの結合テストで進捗の遅延が一時的に発生したが,これは,マスタデータの作成ミスによって一部テストのやり直しが発生したことが原因である。システムテストで同様の事象が発生するとシステムテスト全体の進捗にも影響が出るので,課題として指摘し,P社に再発防止を要請した。

 

〔結合テスト完了基準と完了評価結果〕
 結合テスト完了基準と根拠資料は表1のとおりである。

表1 結合テスト完了基準と根拠資料
項番 評価項目 完了基準 根拠資料
1 進捗 テスト項目を全件消化していること 進步管理表
2 品質 残不良件数が0件であること 不良管理表
次の品質指標が基準範囲内にあること,又は,基準範囲内にない場合は,その理由が明確であること
・不良密度(不良発生件数/システム規模)
・テスト密度(テスト項目数/システム規模)
品質評価結果
発生した不良の原因分析を行い,品質向上策が実施済みであること 品質評価結果
3 課題 結合テストで発生した課題の対応が全て完了していること,又は,残課題がある場合は,対応内容,対応期限が明確であること 課題管理表

追加の確認事項と検討事項
 関係者へのヒアリング及び関連資料の閲覧の結果を踏まえ,D氏は,システム部による結合テスト完了評価結果に関するリスクを洗い出し,追加の確認事項と検討事項を次のとおり整理した。

(1)販売管理システムの品質評価結果では,問題がない理由としてテスト項目数が十分であることを評価しているが,それだけでは不十分なので,追加で確認する。

(2)生産管理システムで発生した課題について,システムテストに向けて適切に対応が行われているかどうかを確認する。

(3)生産管理システムの品質評価結果に記載されている類似不良の品質向上策に関して,財務会計システムは他業務システムともインタフェースがあることから,プロジェクトとしての対応が適切かどうかを確認する。

(4)購買管理システムと生産管理システムとのインタフェース機能の残課題について,システムテストでのリスクを低減するための改善提案を検討する。

(5)〔工程計画〕の内容を踏まえ,今後のシステムテストにおける当プロジェクトの体制に問題がないかどうかを確認する。

 

設問1 〔追加の確認事項と検討事項〕(1)について,D氏が不十分と判断した理由は何か。30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 テスト項目の質が十分であることが評価されていないから

解説

 ー

 

設問2 〔追加の確認事項と検討事項〕(2)について,対応が適切に行われているかどうかを確認するための監査手続は何か。監査証拠を含めて50字以内で具体的に述べよ。

 

解答・解説
解答例

 課題管理表を閲覧し,マスタデータの作成ミスの再発防止策の内容と対応期限を確かめる。

解説

 ー

 

設問3 〔追加の確認事項と検討事項〕(3)について,プロジェクトとしての対応に関して何を確認すべきか。35字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 類似不良点検について,開発チーム間で情報共有されているか

解説

 ー

 

設問4 〔追加の確認事項と検討事項〕(4)について,改善提案の内容として考えられることは何か。50字以内で具体的に述べよ。

 

解答・解説
解答例

 システムテスト開始前に購買管理システムと生産管理システムとの疎通確認テストを実施すること

解説

 ー

 

設問5 〔追加の確認事項と検討事項〕(5)について,当プロジェクトの体制に関して何を確認すべきか。45字以内で具体的に述べよ。

 

解答・解説
解答例

 C 社システム部及び利用部門が主体的にシステムテストを実施する体制を確保できるか

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 長期間使用してきた基幹システムのシステム再構築プロジェクトでは,新規のシステム開発のノウハウやプ ロジェクト管理のノウハウがシステム部門に乏しいケースが多い。その結果,外部委託先に開発作業を丸投げ し,システム再構築プロジェクトが迷走することで,システムの稼働時期が延期したり,コストが大幅に超過 したりするケースが発生している。 本問では,システム再構築プロジェクトの結合テストの監査を題材として,システム開発を外部委託してい る場合の結合テスト完了評価に対する監査の観点,運用すべき監査手続の知識と立案能力を問う。

採点講評

 問 3 では,システム再構築プロジェクトの結合テストの監査を題材に,システム開発を外部に委託している 場合の結合テスト完了評価に対する監査の観点及び監査手続について出題した。全体として正答率は平均的で あった。 設問 2 は,正答率がやや低かった。生産管理システムの課題管理に関する監査手続を問うたが,品質管理に 関する解答が多かった。また,抽象的な解答が多く,マスタデータの作成ミスに着目した具体的な解答が少な かった。設問に対応する本文の事例の内容を正確に読み取って解答してほしい。 設問 3 は,正答率が平均的であった。財務会計システムは生産管理システムだけでなく他業務システムとも インタフェースがあるということを踏まえ,生産管理開発チーム内だけでなく開発チーム間での情報共有が必 要であることに気付いてほしい。

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