IoTを活用した駅務サービスの可用性に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
E社は,関西圏を中心とした中堅の鉄道事業者である。大阪の本社を中心として,3路線50駅の運営を行っている。E社本社には駅業務部と情報システム部がある。駅業務部は,E社が運営する各駅の業務を統括している。情報システム部では,発売した乗車券などの集計を行う駅務システムを運用している。
駅では,ハードウェアメーカーのF社が提供する自動改札機,自動券売機及び窓口端末(以下,これらを駅務機器という)を導入して,駅の出改札業務を行っている。窓口端末は全ての駅に最低1台設置されており,自動券売機で取り扱う全ての出改札業務に対応するほか,駅員が窓口端末を使って駅務システムを利用できる。また,自動改札機と自動券売機は,駅構内のLANを経由して窓口端末と接続されており,駅員は,窓口端末を使って,当該駅の駅務機器の稼働状態を確認することができる。窓口端末で駅務機器の稼働状態の異常を検知し,故障などで保守員による対応が必要と判断した場合,駅員は駅業務部に電話連絡し,駅業務部経由でF社保守員の手配が行われる。
情報システム部は,駅務機器及び駅構内のLANの管理を行っており,駅業務部及び各駅に対して,駅務システムの運用を含めて,駅務サービスとして提供している。E社では,全ての駅の営業時間は同じ時間帯であり,駅務サービスでは,駅の営業時間をサービス提供時間としている。
情報システム部では,駅務機器のシステム保全・点検作業の計画を立て,全ての駅の駅務機器に対して定期的にシステム保全・点検作業を行うことで,故障前に対応を行う予防保全に取り組んでいる。システム保全・点検作業はF社に業務委託されており,駅務機器のシステム保全点検作業の対象部品(以下,部材という)に対して,必要に応じ,図1に示す交換作業が行われる。
図1 システム保全点検作業時に実施される交換作業
システム保全・点検作業は,自動券売機と窓口端末については夜間の営業停止時間帯に行われているが,自動改札機は点検作業の回数と台数が多く,営業時間内に行われている。自動改札機のシステム保全・点検作業に伴う計画停止については,駅の利用者に事前案内され,利用者は他の自動改札機を使うか駅員による改札を受ける。
〔現状の課題と改善策の検討〕
情報システム部では,駅務機器の安定稼働を維持するために,F社に業務委託してシステム保全・点検作業で必要となった部材の交換を行っているが,一部の駅務機器では故障が発生しており,予防保全に取り組む情報システム部の課題となっていた。駅務サービスの可用性の一つの指標として駅務機器の稼働率を採用している。2023年度の状況を表1に示す。
表1 2023年度の駅務機器の故障と稼働率の状況
駅務機器の年間稼働率は,年度ごとに種類別に次の式で計算する。ここで,年間稼働率(%)は小数第3位を四捨五入するものとする。
(全台の年間稼働予定時間の合計 - 全台の年間故障修復時間の合計)÷ 全台の年間稼働予定時間の合計
2024年度,情報システム部では,システム保全・点検作業コストの削減に取り組む方針が示された。そこで,ITサービスマネージャのG氏を中心に,現状の課題及びコスト削減の方針への対応を検討することにした。
まず,G氏は,課題となっている駅務機器の安定稼働の維持について,駅務機器の稼働率の数値を確認した上で,駅務機器の故障発生を減少させる必要があると考えた。
次に,G氏は,システム保全・点検作業コストの削減について考えた。現在の定期交換の対象部材には,実際にはまだ使えるものがあって,無駄が多い。そこで,データ分析を活用したCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)システムを導入することでコストを削減できないかと考えた。G氏は,機器の動作状況を取得するIoTセンサーを設置し,収集したデータを分析して故障の可能性が高まった時点で,対象部材を交換することによって無駄なコストを抑えることができると考えた。また,CBMシステムを導入した場合,現在行っているシステム保全・点検作業と比べて,(ア)サービス提供者としてのサービス可用性管理の観点からもメリットを期待できる。G氏は,これらの仕組みをCBMシステムとして構築し,社内で活用する検討に着手した。
〔CBMシステムの構築準備〕
G氏は,CBMシステムの構築に当たって,まず,どのデータをどのように取得するかを検討するため,F社に相談した。その結果,駅務機器の中でも故障頻度が高く,全ての駅務機器に含まれている券片の搬送機構に着目し,券片が搬送機構を通過する速度(以下,搬送速度という)のデータを取得対象に決めた。また,搬送速度を取得するにはIoTセンサーの設置が必要となるが,F社からは,既存の駅務機器を大きく改造することなく設置が可能であり,少額の投資で搬送速度データを駅務システムに送信する仕組みを実現できるとの回答があった。
次に,G氏は,取得したデータから搬送速度の低下を検知するための(イ)しきい値を設け,継続的に監視する仕組みを構築した。搬送速度がしきい値を下回った場合には,アラームリストを出力し,その情報を,駅業務部及び当該の駅務機器が稼働する駅に対して速やかに通知されるようにした。
また,現行の駅務機器のシステム保全点検作業について,今回は点検対象の一部にCBMシステムを導入することで,点検対象を削減し,点検作業時間も削減できると考えた。
G氏は,社内の変更管理規程に従って,CBMシステムを構築する変更要求を提出した。情報システム部長は,“CBMシステムは,(ウ)点検対象の機器数の削減及び点検作業時間の削減以外のコスト削減効果も期待できる。また,今後対象機器を拡大し,点検作業の頻度を減らしたり,無くしたりできれば,将来的に大きなコスト削減にもつながる”と評価した。変更要求は承認され,CBMシステムの構築が開始された。
〔SNSデータの分析を活用した障害検知〕
CBMシステム構築中のある日,行楽イベントで混雑するある駅で,駅務機器が故障するインシデントが発生し,駅構内が混雑した。当該駅では,駅の利用客対応を優先し,駅業務部への障害連絡が遅れてしまった。インシデントの初動対応が遅れて解決までに時間を要し,駅務サービスの可用性が悪化した。
情報システム部では,インシデント対応中にインシデントの影響の大きさを把握するために,E社が提供する不特定多数の人が閲覧可能なSNSへの投稿内容から利用者の反響を調査した。SNSへの投稿は,“情報源が不特定多数であって現場からの情報より正確性は低いが,情報の早さは現場よりも早い場合がある”といった特性がある。調査を担当したG氏は,調査の過程で,E社が当該インシデントの対応を開始する前に,障害に関する幾つかの投稿があることに気付いた。当該インシデント対応が終了した後日,投稿を時系列に整理して1分ごとに集計したところ,投稿件数が図2のように推移していることが分かった。
図2 障害発生日と通常日の投稿件数の推移
情報システム部では,障害当日20:10に駅業務部からの障害連絡を受け,20:15にインシデントの対応を開始していた。また,SNS上では障害に関する最初の投稿は20:00であった。この結果を見て,G氏は,SNSの特性に着目し,自社の駅務機器に関する障害発生を検知できないか検討することにした。
G氏は,SNSの情報を使って障害を検知する仕組みを,次のステップで考えた。
①SNS上における障害に関する投稿(以下,障害投稿という)を定義する。
②障害が発生したと推定するための条件(以下,検知条件という)を定義する。
G氏は,1の障害投稿の定義として,“「E社」「(E社の)駅」などのE社に関する情報”と“「通れない」「使えない」「障害」などのネガティブワード”の両方が含まれる投稿とした。また,2の検知条件として,次のような条件を抽出した。
・1分当たりの投稿件数が基準値以上であること
・1分当たりの障害投稿件数が基準値以上であること
・1分ごとに5分連続で障害投稿件数が増加傾向にあること
G氏は,三つの検知条件の全てを採用すると検知遅れや検知漏れが増え,(エ)つだけに絞ると誤検知が増えると考えた。そこで,三つの検知条件のうちの二つを満たす場合に障害が発生していると判定することにした。
設問1 〔現状の課題と改善策の検討〕について答えよ。
(1)表1中の a に入れる適切な数値を答えよ。答えは小数第3位を四捨五入して,小数第2位まで求めよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(2)本文中の下線(ア)について,期待できるメリットを,25字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
設問2 〔CBMシステムの構築準備〕について答えよ。
(1)本文中の下線(イ)について,従来の点検作業と比べて,CBMシステムのしきい値を使った運用のメリットとは何か。駅務機器の故障の観点から,40字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(2)本文中の下線(ウ)について,情報システム部長がCBMシステムにコスト削減効果を期待できると考えた理由を,45字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
設問3 〔SNSデータの分析を活用した障害検知〕について答えよ。
(1)G氏の検討に従ってSNSへの投稿を活用した場合,今回のようなインシデントが発生したとき,どのような改善が期待できるか。20字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
ー
(2)G氏が,検知条件について本文中の下線(エ)のように考えたのは,どのような理由からか。SNSへの投稿の特性を表した本文中の字句を使って,25字以内で答えよ。
解答・解説
解答例
XXX
解説
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IPA公開情報
出題趣旨
公開前
採点講評
公開前