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SM 令和3年度春期 午後Ⅰ 問3

 

データセンタのファシリティマネジメントに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 電子機器部品メーカの情報システム子会社であるW社は,自社データセンタ(以下,DCという)で,自社業務に使用する各システムを稼働させている。
 DCにはコンピュータ室が2室あり,それぞれのコンピュータ室にはラックが設置され,サーバが収容されている。DCには,ファシリティマネジメント部(以下,FM部という)とシステム運用部があり,事務室で執務している。FM部は,24時間のシフト体制で担当者が2名常駐し,DC設備の監視と管理を行っている。システム運用部は,24時間のシフト体制でオペレータが4名常駐し,システムの運用と管理を行っている。

〔DCの電力供給設備〕
 DCは,常用電源として電力会社から電力供給を受けている。電力会社からの電力供給に異常が発生した場合に備え,予備電源として自家発電設備(以下,自家発という)を設置している。
 電力会社からの電力供給で瞬断が発生した場合や,自家発による電力供給に切替えを行う場合には,コンピュータ室への電力供給が一時的に停止する。これに備えて,蓄電池を持つUPSをラックに接続して,UPSからラックに電力供給を行っている。UPSからラックなどの電力負荷機器に連続給電できる時間(以下,停電補償時間という)は,負荷の容量に応じて変動する。
 UPSは,一部を冗長構成にするための予備のUPSを含めて,7台設置している。UPSで機器故障が発生した場合は,無瞬断切替え装置によって自動的に予備のUPSからの電力供給に切り替わる。
 また,近年のラック内機器の高集積化に伴う発熱量増加を受けて,コンピュータ室に設置している空調機が全て停止することを防ぐために,一部の空調機もUPSに接続して,UPSから空調機に電力供給を行うこととしている。
 DCの電力供給設備と電力負荷機器を図1に示す。


図1 DCの電力供給設備と電力負荷機器

電力供給設備の課題

(1)自家発の課題
 自家発は,出力容量7,500kVAの電力供給能力があるが,W社の事業拡大に伴い計画された2021年度のサーバ機器増強計画に基づき,電力供給設備の増強の必要性有無を検討した。その結果,サーバ機器を計画どおりに増強すると,(ア)自家発の供給電力が不足することが分かり,自家発の増強を計画した。
 2021年度のサーバ機器増強計画を表1に示す。

 

表1 2021年度のサーバ機器増強計画

(2)UPSの停電補償時間の課題
 電力会社からの電力供給が一定時間停止した場合,自家発が自動で起動する。自家発の機器故障などで自動起動に失敗した場合は,FM部の担当者が自家発を手動で起動する必要がある。2018年に自家発を設置したとき,“電力会社からの電力供給停止から,自家発を手動で切り替えて電力の供給が開始されるまでの時間”(以下,自家発切替え時間という)を測定したところ,測定結果は5分であった。
 UPSは,電力負荷機器の消費電力及び自家発切替え時間を基に選定した。ここで,1kWの消費電力の電力負荷機器には,1.25kVAの出力容量のUPSが必要であるとして検討した。選定の結果,UPS-A,UPS-B,UPS-C,UPS-D及びUPS-Eの5台は,UPSタイプ1のUPSをUPS-F及びUPS-Gの2台は,UPSタイプ2のUPSの採用を決定し,設置した。それぞれのタイプ別の停電補償時間は,表2,3のとおりである。

 

表2 UPSタイプ1の停電補償時間

表3 UPSタイプ2の停電補償時間

 2020年2月に自家発の手動起動のテストを実施したところ,FM部担当者によっては手動起動に最大20分掛かることが分かった。FM部は,自家発切替え時間の短縮を目的にFM部担当者の訓練を行うこととした。同時に,UPSの停電補償時間に問題がないかを確認するために,表1の2021年度のサーバ機器増強計画どおりに機器を増強した場合の必要な停電補償時間を20分とする条件で検討した。そこで,予備のUPS機器を除いたUPS-A,UPS-B,UPS-E,UPS-Fを対象に検討した結果,これらのUPSでは,(イ)必要な停電補償時間を満たせなくなる時期が来ることから,FM部は,UPS更新計画を策定することとした。

UPSの増設
 W社は,電子機器部品にセンサや通信モジュールを取り付けることで,リアルタイムで稼働状況データを収集するIoTシステム(以下,Tシステムという)を2022年4月に稼働させることになった。Tシステムのサーバ機器は複数必要であり,ラック1及びラック3に分散して収容する。Tシステムが求める高い可用性を実現するために,UPSの冗長性を強化することとした。そこで,メンテナンスなどで一方のUPSを停止したときに,他方のUPSで障害が発生したときに備えて,電力供給を継続するために,(ウ)予備のUPSを1台増設することを計画した。

空調機障害の発生
 FM部では,空調機で障害が発生した場合は,表4に示す空調機停止時の影響度判定と対応に従って,対応を行うこととしている。

表4 空調機停止時の影響度判定と対応

 2020年10月11日23時頃,ラック1内の温度が上昇し,ラック1に収容されている,社内向けの勤怠管理システムを運用するサーバ(以下,サーバ1という)が停止した。勤怠管理システムを使ったサービスは,10月11日0時から10月12日8時までが計画停止時間帯であったので,サーバ停止による業務への影響は発生しなかった。
 今回のラック1内の温度上昇は,電力会社からの電力供給で瞬断が発生し,空調機が停止したことが原因であった。空調機2は保守作業中で使用できず,空調機1の正常性確認を行ったことで再稼働するまで50分掛かったので,ラック1の温度が上昇した。幸い,停止したサーバはサーバ1だけであった。10月11日22時30分に発生した空調機障害の対応経緯を,表5に示す。

表5 空調機障害の対応経緯

 10月12日8:00に勤怠管理システムのオンライン処理が開始しなかったのは,前日の23:00にサーバ1が停止した際に発生したファイルの内容に関する不具合が原因であった。勤怠管理システムの担当者のY氏は,10月12日8:00に出社したデータベースの技術者に異常終了について相談した結果,サーバ停止の状況によってはファイルの内容に不具合が発生することがあることを伝えられ,問題の原因が判明し,復旧対応を行った。
 FM部は,空調機2の保守作業中に空調機が停止したことは大きな問題と捉え,(エ)空調機停止の再発防止策を検討することとなった。また,表5の対応を振り返り,サーバ停止を検知した時点で,関係者を巻き込んで組織的な対応を行うべき であったことから,今後は影響度を高として対応することとし,(オ)表4の判定基準を見直すことにした。

設問1 〔電力供給設備の課題〕について,(1),(2)に答えよ。ここで,遮断状態の空調機は稼働していないものとする。また,1kWの消費電力の電力負荷機器には,1.25kVAの出力容量の電力供給設備が必要であるとする。

 

(1)本文中の下線(ア)について表1のサーバ機器増強計画に従って機器を増強した場合,自家発の供給電力不足が発生する年月を答えよ。

 

解答・解説
解答例

 2021 12

解説

 ー

 

(2)本文中の下線(イ)について,必要な停電補償時間を満たせなくなる時期はいつか。UPSのタイプ別に年月を答えよ。

 

解答・解説
解答例

 UPS タイプ①:2022 2
 UPS タイプ②:2021 8

解説

 ー

 

設問2 〔UPSの増設〕について,本文中の下線(ウ)の対応を実施した場合,増設したUPSをどの電力負荷機器と接続すべきか。25字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 ラック 3(に収容する T システムのサーバ機器)

解説

 ー

 

設問3 〔空調機障害の発生〕について,(1),(2)に答えよ。

 

(1)本文中の下線(エ)について空調機1の停止を防ぐために,図1のDCの電力供給設備と電力負荷機器をどのように変更すべきか。30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 空調機 1 及び空調機 2 に接続する UPS 装置を設置する。

解説

 ー

 

(2)本文中の下線(オ)について,表4の判定基準の記述内容をどのように見直すべきか。40字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 表 4 の影響度高の判定基準に,“又はサーバに異常発生”を追加する。

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 データセンタは,分散する IT 機器を集中設置し効率よく運用するために作られた専用施設であって,高い信頼性の確保が求められる。
 本問では,自社のデータセンタにおける電力供給設備の冗長性などに関する課題を題材として,ファシリティマネジメント,インシデントの管理に関する実務経験を問う。

採点講評

 問 3 では,データセンタにおける電力供給設備の冗長性などに関する課題を題材に,ファシリティマネジメントについて出題した。全体として正答率は平均的であった。
 設問 1 は,正答率がやや高かった。消費電力(kW)に必要な出力容量(kVA)の算出方法は,正しく理解されているようであった。
 設問 2 は,新規システムの求める電力供給設備の冗長構成要件に対して,満たせていない箇所を特定する設問であった。正答率は平均的であったが,冗長性に問題がない箇所や,新規システムに関係のない箇所を特定するといった誤った解答が散見された。
 設問 3 は,正答率は平均的であったが,設問を正しく理解していないと思われる解答が散見された。(1)では,予備の UPS を利用する解答が散見されたが,他 UPS の冗長性を下げてしまうことから,誤りである。部分的な冗長性だけでなく,全体の冗長性の把握が重要であることを理解してほしい。(2)は判定基準の変更を求める設問であったが,対応内容の変更を記述する誤った解答が散見された。設問で明示した条件を正しく理解 して,解答してほしかった。

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