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弁理士 商標 R4-6

 

 商標権の侵害及び侵害訴訟等に関し、次の(イ)〜(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

  1. 商標権侵害訴訟において、原告たる商標権者は、被告の侵害行為を特定して主張する必要があるが、市場で販売されている被告の商品や被告が提供する役務についての登録商標と同一又は類似の標章の使用に関する被告の行為を特定すればよいので、いわゆる具体的態様の明示義務を被告に課す特許法第104条の2の規定は、商標法では準用されていない。
  2. 商標権侵害訴訟において、登録商標に類似する標章を被告がその製造販売する商品につき商標として使用したが、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが被告の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての使用料相当額の損害が生じないと判断される場合がある。
  3. いわゆるディスクリプションメタタグは、インターネット上に開設したウェブサイトの内容に関する説明を記載するものであり、検索サイトの検索で当該ウェブサイトがヒットした場合、その検索結果画面に、当該ウェブサイトに関して当該ディスクリプションメタタグどおりの説明が表示され、その内容が需要者に視認されるが、ディスクリプションメタタグ自体は、ウェブサイトのhtmlファイル上のコードの記載であって、ブラウザの表示からソース表示機能をクリックするなど、需要者が意識的に所定の操作をしない限り視認できないものである。そのため、当該ディスクリプションメタタグに自己のウェブサイトの内容に関する説明として他人の登録商標を記載し、検索サイトの検索結果画面に当該自己のウェブサイトの説明として当該他人の登録商標を表示させる行為をしても、当該行為が商標権の侵害を構成する場合はない。
  4. 商標権者が故意又は過失により自己の商標権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標の使用によるものであるときは、その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、商標権者が受けた損害の額とすることができる場合はない。
  5. 商標権侵害訴訟において、被告は、原告の商標権に係る登録商標が、当該商標権に係る商標登録の出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に類似する商標であって、その他人の商標登録に係る指定商品又は指定役務について使用をする商標であるために、原告の商標登録が無効理由を有する場合であり、かつ当該無効を主張することが商標権侵害訴訟の審理を不当に遅延させることを目的とするものでない場合であっても、当該無効の抗弁を主張することが許されない場合がある。
  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 4つ
  5. なし

解答・解説

解答

 2

解説

  1. 商標権侵害訴訟において、原告たる商標権者は、被告の侵害行為を特定して主張する必要があるが、市場で販売されている被告の商品や被告が提供する役務についての登録商標と同一又は類似の標章の使用に関する被告の行為を特定すればよいので、いわゆる具体的態様の明示義務を被告に課す特許法第104条の2の規定は、商標法では準用されていない。
    ❌ 商39条で準用する特104条の2
    特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。[特104条の2]

  2. 商標権侵害訴訟において、登録商標に類似する標章を被告がその製造販売する商品につき商標として使用したが、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが被告の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての使用料相当額の損害が生じないと判断される場合がある。
    ⭕️ 小僧寿し事件


  3. いわゆるディスクリプションメタタグは、インターネット上に開設したウェブサイトの内容に関する説明を記載するものであり、検索サイトの検索で当該ウェブサイトがヒットした場合、その検索結果画面に、当該ウェブサイトに関して当該ディスクリプションメタタグどおりの説明が表示され、その内容が需要者に視認されるが、ディスクリプションメタタグ自体は、ウェブサイトのhtmlファイル上のコードの記載であって、ブラウザの表示からソース表示機能をクリックするなど、需要者が意識的に所定の操作をしない限り視認できないものである。そのため、当該ディスクリプションメタタグに自己のウェブサイトの内容に関する説明として他人の登録商標を記載し、検索サイトの検索結果画面に当該自己のウェブサイトの説明として当該他人の登録商標を表示させる行為をしても、当該行為が商標権の侵害を構成する場合はない。
    ❌ バイクリフター事件


  4. 商標権者が故意又は過失により自己の商標権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標の使用によるものであるときは、その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、商標権者が受けた損害の額とすることができる場合はない。
    ❌ 商38条5項
    商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。第五十条において同じ。)の使用によるものであるときは、その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。[商38条5項]

  5. 商標権侵害訴訟において、被告は、原告の商標権に係る登録商標が、当該商標権に係る商標登録の出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に類似する商標であって、その他人の商標登録に係る指定商品又は指定役務について使用をする商標であるために、原告の商標登録が無効理由を有する場合であり、かつ当該無効を主張することが商標権侵害訴訟の審理を不当に遅延させることを目的とするものでない場合であっても、当該無効の抗弁を主張することが許されない場合がある。
    ⭕️ 商4条1項11号、商47条1項
    次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
    十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの[商4条1項11号]
    商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。[商47条1項]

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