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SA 令和5年度春期 午後Ⅰ 問2

   

セミナー管理システムに関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 ソフトウェアパッケージの開発・販売を行っているC社では,全国主要都市で自社製品の説明会を開催していたが,新たに無料のオンラインセミナーを開催することになり,それをサポートするセミナー管理システム(以下,新システムという)をWebシステムとして開発することになった。

〔セミナー管理業務の概要〕
 C社のセミナー管理業務の概要は次のとおりである。

(1)セミナー登録
 企画担当者がセミナーを企画し,企画書を作成する。
 セミナーは,企画担当者のほか,講演資料を作成して講演を行う講師担当者及びセミナーの運営を行う運営担当者で担当する。企画・講師・運営の三つの担当役割について,それぞれ複数名の担当者を設定でき,一人の担当者が複数の担当役割を兼務する場合もある。一つの担当役割に複数名を設定した場合は,その中でリーダーを一人設定する。セミナーには,リソースのひっ迫を避けるために受講する人数について定員を設定している。
 企画書には,セミナー名,セミナー内容,定員,開催日時,終了時刻及び企画・講師・運営の各担当者の担当者IDと担当者名が記載されている。
 企画担当者は,作成した企画書を上長に提出し,承認を受けた後,実施予定セミナーとして登録する。

(2)募集・申込み
 企画担当者はセミナーの概要を募集画面に掲載して受講申込みを受け付ける。
 受講を希望する者は申込入力画面からセミナーを選択し,氏名,会社名,部署名,役職名,メールアドレスなどの情報を入力して申込みを行う。
 当該セミナーについて同一メールアドレスで申込みが重複しておらず,セミナーの定員に達していない場合は申込みを確定し,受講確定メールを受講申込者へ送付する。
 申込みはセミナー開催の3日前に締め切る。

(3)開催準備,開催案内
 運営担当者はセミナー開催の2日前にオンラインルームを開設し,アクセスURLとアクセスキーを決定する。
 運営担当者は受講申込者に開催案内メールを送信する。開催案内メールには,受講確定メールに記載した内容に加えて,アクセスURL及びアクセスキーが記載されている。
 企画担当者は,受講申込者に回答してもらうアンケートを作成する。

(4)受講
 受講申込者はセミナー開催当日にWebブラウザからアクセスURLにアクセスし,オンラインルームにログインしてセミナーを受講する。
 なお,受講申込者は多重ログインできない。

(5)アンケート
 セミナー終了後,運営担当者から受講申込者にアンケートURLが記載されたアンケートメールを送信する。受講申込者はアンケートURLにアクセスし,受講ID,氏名及び受講の有無を入力し,個別の設問に回答する。また,受講した者(以下,受講者という)はセミナーの評価点を10点満点の数字で入力し,受講しなかった者は受講しなかった理由を入力する。入力したアンケートの回答は変更できない。

(6)集計・分析
 企画担当者はアンケートの回答について,集計・分析を行った結果を上長に報告する。また,担当者の業務負荷確認のために,1か月ごとに担当したセミナーの数と担当役割を集計して上長に報告する。

 

新システムの概要
 情報システム部のD課長は,業務の概要を基に新システムの設計を行った。

(1)セミナー登録
 セミナーの企画書を登録する機能。企画担当者が企画書の内容を入力すると,セミナー,セミナー担当の各ファイルにレコードを作成する。この時,セミナーに一意のセミナーIDを付与する。セミナー担当に登録する担当者IDは別システムで事前に付与されている。

(2)募集・申込み
 受講を希望する者からの申込みを受け付け,申込みの重複及び定員超過を判定し,受講を確定させる機能。申込判定がOKのときは申込確認画面を表示し,確定ボタンが押されたら受講を確定する。申込確認画面で,取消ボタンが押されたら申込入力画面に戻る。
 受講確定時に受講IDを発行し,受講申込ファイルにレコードを作成する。受講IDは,英数字8桁から成る一意のIDである。
 受講確定後,受講ID,セミナーID,セミナー名,開催日時,終了時刻及びセミナー内容を記載した受講確定メールを受講申込者へ送付する。

(3)開催準備,開催案内
 開設したオンラインルームのアクセスURLとアクセスキーをオンラインルームファイルに登録し,受講申込者に開催案内メールを送信する機能,及びセミナー終了後に回答してもらうアンケート画面を作成する機能。開催案内メールには,受講確定メールに記載した内容に加えて,アクセスURL及びアクセスキーを記載する。

(4)受講
 受講を受け付ける機能。受講申込者はアクセスURLにアクセスし,開催案内メールにある受講ID及びアクセスキーを転記してオンラインルームにログインし,セミナーを受講する。ログイン時に受講ID及びアクセスキーのチェックを行い,受講ファイルにレコードを作成する。この時,受講受付日時に現在日時を設定する。

(5)アンケート
 対象者にアンケートメールを送信する機能,及びアンケート画面から入力された回答を基にアンケートファイルにレコードを作成する機能。

(6)集計・分析
 アンケートの回答の集計・分析及び担当者の担当役割とセミナー数を集計する機能。

 

 D課長は,上記の概要を基に新システムのデータ設計を行い,主要なファイルを表1のように設計した。

表1 新システムの主要なファイル
ファイル名 主な属性(下線は主キーを示す。)
セミナー セミナーID,セミナー名,セミナー内容,開催日時,終了時刻,定員アンケートURL
セミナー担当 セミナーID,担当役割,担当者ID,リーダーフラグ¹⁾
受講申込 受講ID,セミナーID,氏名,会社名,部署名,役職名,メールアドレス,申込日時
オンラインルーム セミナーID,アクセスURL,アクセスキー
受講 受講ID,受講受付日時
アンケート 受講ID,受講有無²⁾,評価点³⁾,受講しなかった理由,個別設問回答内容,回答日時
注記 セミナー担当ファイルについては,全ての属性を記載しているが,主キーの下線は省略している。
注¹⁾ 担当役割に複数の担当者が設定されたとき,その中のリーダーの担当者のリーダーフラグに“1”を,それ以外の担当者のリーダーフラグに“0”を設定している。
注²⁾ 受講者に“有”,受講しなかった者に“無”を設定している。
注³⁾ 受講者の評価点は1から10の整数であり,受講しなかった者の評価点は0を設定する。

 また,新システムにおける募集・申込みの処理について,表2のように設計した。

表2 新システムにおける募集・申込みの処理
処理名 処理概要
申込入力 申込入力画面から,セミナーID,氏名,会社名,部署名,役職名及びメールアドレスを受け付ける。
申込判定(重複) 当該セミナーIDで,  a  ファイルを検索し,入力された  b  と同じ  b  が存在すればエラーとし,エラーメッセージを表示して処理を終了する。
申込判定(定員) 当該セミナーIDで,受講申込ファイル及びセミナーファイルを検索し,受講申込ファイルのレコード件数がセミナーファイルの定員以上のときは,定員超過でエラーとし,エラーメッセージを表示して処理を終了する。申込判定がOKのときは申込確認画面を表示する。
申込確認 申込確認画面の確定ボタンが押されたときは,受講IDを発行して受講申込ファイルにレコードを作成するとともに受講確定メールを送信する。取消ボタンが押されたときは,申込入力画面に戻る。

指摘及び追加要望
 D課長が設計内容を上長に説明したところ,次のような指摘及び追加要望が出された。

・申込確認処理について,今のままでは確定ボタンを押した際に定員を超過する可能性がある。定員超過の際は,エラーとするよう変更してほしい。

・今のログイン方式では,通信障害などで接続が切れた場合に再接続ができなくなる。接続が切れたことを検知した場合には,当該受講IDで再ログインができるようにしてほしい。

・アンケートURLにアクセスした際に,入力画面で受講ID及び氏名を入力させるのではなく,あらかじめ受講ID及び氏名を埋め込んだページを開いて回答させるようにしたいので,個別のアンケートURLを送信してほしい。

・開催したセミナーの申込率,受講率及び平均評価点の三つの項目を一覧表示する機能を追加してほしい。ここで,申込率は定員に対する受講申込者数の割合,受講率は受講申込者数に対する受講者数の割合,平均評価点はアンケートに回答した受講者の評価点の平均点を示す。

 

新システムの設計変更
 D課長は指摘及び追加要望を受け,次のような設計変更を行った。

・申込確認画面で確定ボタンが押されたときに再度申込判定の処理を行うようにし,エラーになった場合はエラーメッセージを表示して処理を終了する。また,確定ボタンを押してもエラーとなることがある旨を申込確認画面に表示する。

・受講ファイルに,接続フラグという属性を追加し,初期値として“1”を設定する。別途,接続が切れたことを検知した際に接続フラグに“0”を設定するようにする。その上で再接続する際の①ログイン時の受講IDに関するチェック及び受講ファイルの更新処理を新たに追加する

・セミナー終了後に受講申込者に送信するアンケートURLを,受講IDごとの個別のURLに変更する。これに伴って,②表1中のある属性を別のファイルに移す

・セミナーファイルに,申込率,受講率及び平均評価点の属性を追加する。申込率,受講率及び平均評価点は,セミナーID及びセミナーIDから検索した受講IDを用いて表1の各ファイルを検索し,その結果を用いて,それぞれ,表3に示す計算式で求める。ただし,各計算式の除数が0のときは項目の値を0とする。

 

表3 各項目の計算式
項目 計算式
申込率(%) 受講申込ファイルのレコード件数÷  c  ×100
受講率(%)   d  ÷  e  ×100
平均評価点(点)   f  ÷アンケートファイルで受講有無が“有”のレコード件数

設問1 〔新システムの概要〕について答えよ。

 

(1)セミナー担当ファイルに主キーを設定する場合,主キーとするものを表1中の属性を用いて全て答えよ。

 

解答・解説
解答例

 セミナーID,担当役割,担当者 ID

解説

 ー

 

(2)表2中の  a    b  に入れる適切な字句を答えよ。

 

解答・解説
解答例

 a:受講申込
 b:メールアドレス

解説

 ー

 

設問2 〔指摘及び追加要望〕について,申込確認処理で,確定ボタンを押した際に定員を超過するのはどのような場合か。40字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 申込確認画面が表示されている間に他者の申込みが確定されて定員に達した場合

解説

 ー

 

設問3 〔新システムの設計変更〕について答えよ。

 

(1)本文中の下線①について,受講IDに関するチェックの内容を40字以内で,受講ファイルの更新処理の内容を30字以内で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 チェック:当該受講 ID の受講ファイルの接続フラグが“0”のときはエラーと しない。
 更新処理:受講ファイルの接続フラグに“1”を設定して更新する。

解説

 ー

 

(2)本文中の下線②について,どの属性をどのファイルに移すか。属性と移す先のファイルを表1中のファイル名と属性で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 属性:アンケート URL
 ファイル:受講申込

解説

 ー

 

(3)表3中の  c    f  に入れる適切な字句を,表中のファイル名と属性を用いて20字以内で答えよ。ここで,レコード件数が該当する場合は,表3の記載にならい,"のレコード件数”という形式で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 c:セミナーファイルの定員
 d:受講ファイルのレコード件数
 e:受講申込ファイルのレコード件数
 f:アンケートファイルの評価点の合計

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 情報システムの構築において,システムアーキテクトは,要件を正しく理解した上で設計を行う必要がある。昨今,新生活様式の浸透に伴い,従来対面方式で行っていた業務をオンラインに変更することが多くなっている。
 本問では,オンラインセミナーを担うセミナー管理システムの新規開発を題材として,要件を正しく理解した上で,機能やファイルの設計を行う能力,及びレビュー指摘事項や追加要望に応じた設計変更を行う能力を問う。

採点講評

 問 2 では,セミナー管理システムの新規開発を題材に,システムの機能やファイルの設計,及びレビュー指摘事項や追加要望に応じた設計変更について出題した。全体として正答率は平均的であった。 設問 2 の正答率は平均的であったが,先に他者が申込みを確定した場合とだけ解答し,その結果として定員に達することについては全く触れていない受験者が多かった。どのような場合に定員を超過することがあるのかを考えて,正答を導き出してほしい。
 設問 3(2)は,正答率が低かった。移す先のファイル名を誤って解答した受験者が散見された。設計変更前のデータ設計を把握した上で,追加要望を満たすことができる適切な移動先のファイルを導き出してほしい。

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