アジャイル開発における要件定義の進め方について
情報システムの開発をアジャイル開発で進めることが増えてきている。代表的な手法のスクラムでは,スクラムマスタがアジャイル開発を主導する。システムアーキテクトはスクラムマスタの役割を担うことが多い。
スクラムでは,要件の“誰が何のために何をするか”をユーザストーリ(以下,USという)として定め,必要に応じてスプリントごとに見直す。例えば,スマートフォンアプリケーションによるポイントカードシステムでは,主なUSとして,“利用者が,商品を得るために,ためたポイントを商品と交換する”,“利用者が,ポイントの失効を防ぐために,ポイントの有効期限を確認する”などがある。
スクラムマスタはプロダクトオーナとともに,まずUSをスプリントの期間内で完了できる規模や難易度に調整する必要がある。そのためにはUSを人・場所・時間・操作頻度などで分類して,規模や難易度を明らかにする。USに抜け漏れが判明した場合は不足のUSを追加する。USの規模が大き過ぎる場合や難易度が高過ぎる場合は,操作の切れ目,操作結果などで分割する。USの規模が小さ過ぎる場合は統合することもある。
次に,USに優先順位を付け,プロダクトオーナと合意の上でプロダクトバックログにし,今回のスプリント内で実現すべきUSを決定する。スクラムでは,USに表現される“誰が”にとって価値の高いUSを優先することが一般的である。例えば先の例で,利用者のメリットの度合いに着目して優先順位を付ける場合,“利用者が,商品を得るために,ためたポイントを商品と交換する”のUSを優先する。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
設問ア あなたが携わったアジャイル開発について,対象の業務と情報システムの概要,アジャイル開発を選択した理由を,800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた開発において,あなたは,どのようなUSをどのように分類し,規模や難易度をどのように調整したか。分類方法を選択した理由を含めて800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べたUSに関して,あなたは,どのような価値に着目して,USの優先順位を付けたか。具体的なUSの例を交えて,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
IPA公開情報
出題趣旨
情報システムの開発をアジャイル開発で進めることが増えてきている。代表的な手法のスクラムでは,スクラムマスタがアジャイル開発を主導する。システムアーキテクトはスクラムマスタの役割を担うことが多い。 スクラムでは,要件の“誰が・何のために・何をするか”をユーザストーリ(以下,US という)として定め,必要に応じてスプリントごとに見直す。スクラムマスタはプロダクトオーナとともに,US をスプリントの期間内で完了できる規模や難易度に調整する必要がある。さらに,US に優先順位を付け,プロダクトオーナと合意の上でプロダクトバックログにし,今回のスプリント内で実現すべき US を決定しなければならない。
本問は,アジャイル開発における US の規模や難易度の調整と優先順位の決定について,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要なアジャイル開発の主導者としての能力を評価する。
採点講評
全問に共通して,自らの経験に基づき設問に素直に答えている論述が多く,問題文に記載してあるプロセスや観点などを抜き出し,一般論と組み合わせただけの表面的な論述は少なかった。一方で,実施事項の論述にとどまり,実施した理由や検討の経緯など,システムアーキテクトとして考慮した点が読み取れない論述も見受けられた。自らが実際にシステムアーキテクトとして,結論を導くに当たり,検討して取り組んだ内容を具体的に論述してほしい。
問 1 では,アジャイル開発におけるユーザストーリ(以下,US という)の規模や難易度の調整と価値に基づく優先順位の決定について,具体的に論述することを期待した。適切な論述では,US の分類,規模や難易度の調整,価値に基づく優先順位付けについて具体的に述べていた。一方で,具体的な US やその価値について言及しておらず,一般的な仕様や機能の要件定義について述べている論述や,US の規模や難易度は論述されていても,その調整について具体的に述べられていない論述など,求められている趣旨に沿って適切に論述できていないものも散見された。システムアーキテクトは,US の抽出・調整・優先順位付けなどのアジャイル開発の手法を利用し,アジャイル開発を主導することを心掛けてほしい。
解答例
構成例
準備中
論述例
設問ア
準備中
設問イ
準備中
設問ウ
準備中