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NW 令和3年度春期 午後Ⅰ 問3

 

通信品質の確保に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

 Y社は,機械製品の輸入及び国内販売を行う社員数500名の商社であり,本社のほかに5か所の営業所(以下,本社及び営業所を拠点という)をもっている。このたび,Y社では,老朽化した電話設備を廃棄して,Z社の音声クラウドサービス(以下,電話サービスという)を利用することで,電話設備の維持管理コストの削減を図ることにした。情報システム部のX主任が,電話サービス導入作業を担当することになった。

現状の調査
 X主任は,既設の電話設備の内容について総務部の担当者から説明を受け,現在の全社のネットワーク構成をまとめた。Y社のネットワーク構成を,図1に示す。


図1 Y社のネットワーク構成

 Y社のネットワークの使用方法を次に示す。

・社員は,本社のDMZのプロキシサーバ経由でインターネットにアクセスするとともに,本社のサーバ室の複数のサーバを利用している。

・拠点間の内線通話は,IP-GWを介して広域イーサ網経由で行っている。

 

電話サービス導入後のネットワーク構成
 次に,X主任は,電話サービスの仕様を基に,図2に示す,電話サービス導入後のネットワーク構成を設計した。


図2 電話サービス導入後のネットワーク構成

 図2中のaにはVLAN10,bにはVLAN15,c,d,eにはVLAN20,fにはVLAN100,gにはVLAN150,hにはVLAN25,iにはVLAN200,jにはVLAN210というVLANがそれぞれ設定されている
 ITELは,PoEの受電機能をもつ製品を導入してITEL用の電源タップを不要にする。PCは,ITELのPC接続用のポートに接続する。①営業所のL2SW及び本社のL2SW01とL2SW02は,PoEの給電機能をもつ製品に交換する
 電話サービス導入後は,音声を全てIPパケット化し,データパケットと一緒にLAN上に流す。Y社が利用するVoIP(Voice over Internet Protocol)では,音声の符号化にG.729として標準化されたCS-ACELPが使用される。CS-ACELPのビットレートは,  a  kビット/秒であり,音声をIPパケット化してLAN上に流すと,イーサネットフレームヘッダのほかに,IP,  b  及びRTPヘッダが付加されるので1回線当たり34.4kビット/秒の帯域が必要となる。しかし,全社員が同時に通話した場合でも,本社のLANの帯域には余裕があると考えた。
 電話サービスには,本社のIPsecルータ経由で接続する。電話サービスは,Y社から送信された外線通話の音声パケットをGWで受信し,セッション管理を行う。

 X主任は,図2の構成への変更作業完了後,電話サービスの運用テストを実施し,問題なく終了したので,電話サービスに切り替えた。

電話サービスで発生した問題と対策
 電話サービスへの切替後のあるとき,eLNサーバで提供する動画コンテンツの情報セキュリティ基礎コース(以下,S基礎コースという)を,3日間で全社員に受講させることが決まった。受講日は部署ごとに割り当てられた。
 受講開始日の昼過ぎ,本社や営業所の電話利用者から,通話が途切れるというクレームが発生した。X主任は,S基礎コースの受講を停止させて原因を調査した。調査の結果,eLNサーバからS基礎コースの動画パケットが大量に送信されたことが分かった。大量の動画パケットがL3SW0に入力されたことによって,L3SW0で音声パケットの遅延又は  c  が発生したことが原因であると推定できた。
 そこで,X主任は,本社のITEL,L3SW0L2SW01及びL2SW02と,全営業所のITEL,L3SW及びL2SWに,音声パケットの転送を優先させる設定を行うことにした。例として,本社と営業所1に設定した優先制御の内容を次に示す。

(レイヤ2マーキングによる優先制御)

・ITEL,L2SW01,L2SW02及びL2SW1に,CoS(Class of Service)値を基にしたPQ(Priority Queuing)による優先制御を設定する。

・ITELにはVLAN機能があるので,音声フレームとPCが送受信するデータフレームを異なるVLANに所属させ,②ITELのアップリンクポートにタグVLANを設定する

・L2SW01に接続するITELには,VLAN100とVLAN105を,L2SW02に接続するITELには,VLAN150とVLAN155を,L2SW1に接続するITELには,VLAN210とVLAN215を設定する。

・ITELは,音声フレームとデータフレームに異なるCoS値を,フレーム内のTCI(Tag Control Information)の上位3ビットにマーキングして出力する。

・ITELとL3SWに接続する,L2SW01,L2SW02及びL2SW1のポートには,それぞれキュー1とキュー2の二つの出力キューを作成し,キュー1を最優先キューとする。最優先の設定によって,キュー1のフレーム出力が優先され,キュー1にフレームがなくなるまでキュー2からフレームは出力されない。

・L2SW01,L2SW02及びL2SW1ではCoS値を基に,③音声フレームをキュー1,データフレームをキュー2に入れる

(レイヤ3マーキングによる優先制御)

・L3SWに,Diffserv(Differentiated Services)による優先制御を設定する。

・優先制御は,PQとWRR(Weighted Round Robin)を併用する。

・L3SWのf〜jには,キュー1〜キュー3の3種類の出力キューを作成し,キュー1はPQの最優先キューとし,キュー2とキュー3より優先させる。キュー2には重み比率75%,キュー3には重み比率25%のWRRを設定する。a〜eの出力キューでは,優先制御は行わない。

  ア  から受信したフレームにはCoS値がマーキングされているので,CoS値に対応したDSCP(Diffserv Code Point)値を,IPヘッダの  d  フィールドをDSCPとして再定義した6ビットにマーキングする。

  イ  から受信したパケットは,音声パケット,eLNサーバのパケット(以下,eLNパケットという),その他のデータパケット(以下,Dパケットという)の3種類に分類し,対応するDSCP値をマーキングする。

・L3SWの内部のルータは,受信したパケットの出力ポートを経路表から決定し,DSCP値を基に,音声パケットをキュー1,④eLNパケットをキュー2,Dパケットをキュー3に入れる

 

 上記の設定を行った後にS基礎コースの受講を再開したが,本社及び営業所の電話利用者からのクレームは発生しなかった。X主任は,優先制御の設定によって問題が解決できたと判断し,システムの運用を継続させた。

設問1 本文中の  a    d  に入れる適切な字句又は数値を答えよ。

 

解答・解説
解答例

 a:8
 b:UDP
 c:廃棄 又は ドロップ 又は 損失
 d:ToS

解説

 ー

 

設問2 〔現状の調査〕について,(1),(2)に答えよ。

 

(1)図1において,音声信号がIPパケット化される通話はどのような通話か。本文中の字句を用いて答えよ。

 

解答・解説
解答例

 拠点間の内線通話

解説

 ー

 

(2)図1中のIP-GWは,音声パケットのジッタを吸収するためのバッファをもっている。しかし,バッファを大きくし過ぎるとスムーズな会話ができなくなる。その理由を,パケットという字句を用いて,20字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 パケットの音声化遅延が大きくなるから

解説

 ー

 

設問3 〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕について,(1),(2)に答えよ。

 

(1)図1中に示した現在の回線数を維持する場合,図2中のL3SW0のポートaから出力される音声パケットの通信量の最大値を,kビット/秒で答えよ。

 

解答・解説
解答例

 4,472

解説

 ー

 

(2)本文中の下線①のL2SWに,PoE未対応の機器を誤って接続した場合の状態について,PoEの機能に着目し,20字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 L2SW からの給電は行われない。

解説

 ー

 

設問4 〔電話サービスで発生した問題と対策〕について(1)〜(5)に答えよ。

 

(1)本文中の下線②について,レイヤ2のCoS値を基にした優先制御にはタグVLANが必要になる。その理由を,30字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 フレーム中のタグ情報内の優先ビットを使用するから

解説

 ー

 

(2)優先制御の設定後,L3SW0の内部のルータに新たに作成されるVLANインタフェースの数を答えよ。

 

解答・解説
解答例

 2

解説

 ー

 

(3)本文中の下線③の処理が行われたとき,キュー1に音声フレームが残っていなくても,キュー1に入った音声フレームの出力が待たされることがある。音声フレームの出力が待たされるのはどのような場合か。20字以内で答えよ。このとき,L2SWの内部処理時間は無視できるものとする。

 

解答・解説
解答例

 データフレームが出力中の場合

解説

 ー

 

(4)本文中の  ア    イ  に入れるポートを,図2中のa〜jの中から全て答えよ。

 

解答・解説
解答例

 ア:f,g,j
 イ:a,b,c,d,e

解説

 ー

 

(5)本文中の下線④について,eLNパケットをDパケットと異なるキュー2に入れる目的を,35字以内で述べよ。

 

解答・解説
解答例

 D パケットによる eLN パケット転送への影響を少なくするため

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 音声を VoIP 技術によって IP パケット化し,PBX を廃止する事例は多い。VoIP では,音声符号化方式に低ビットレートの CS-ACELP などが利用される。音声パケットに遅延や廃棄が発生すると,音声品質が低下する ので,既設の LAN で音声パケットを送受信する場合は,遅延や廃棄を避ける対策が必要となることがある。
 本問では,音声クラウドサービスを利用して,音声パケットを既設の LAN に流す事例を取り上げた。VoIP 導入によって発生した通話の不具合を,レイヤ 2 及びレイヤ 3 での優先制御によって改善する対策を題材にして,ネットワークの設計,構築,運用に携わる受験者が修得した技術と経験が,実務で活用できる水準かどうかを問う。

採点講評

 問 3 では,音声クラウドサービスの利用を題材に,レイヤ 2 及びレイヤ 3 での優先制御について出題した。全体として,正答率は平均的であった。
 設問 1 は,(a)の正答率が低かった。CS-ACELP は,VoIP で広く利用されている音声符号化技術なので,よく理解してほしい。
 設問 3 は,(2)の正答率が高かったが,(1)の正答率が低かった。図 2 中の L3SW0 の a ポートから出力されるのは外線通話パケットであることから,本文中に記述された情報を基に,全社の外線数が 130 回線,1 回線当たりの必要帯域が 34.4k ビット/秒という通信量の最大値を導き出してほしい。
 設問 4(1)の正答率は,平均的であった。レイヤ 2 の優先制御に利用される CoS 値がフレーム中の VLAN タグ内の TCI に設定されることから,タグ VLAN が必須になることを,よく理解してほしい。(2)は,正答率が低か った。L3SW0 の内部ルータに生成される VLAN インタフェースは,L3SW0 の物理ポートに設定される VLAN と論理的に接続される構成になることをよく理解してほしい。

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