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DB 令和3年度秋期 午後Ⅱ 問2

   

製品物流業務に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。

 E社は中堅市販薬メーカである。E社の顧客には,医薬品卸業と医薬品の量販店チェーンがある。以前は医薬品卸業が主な顧客であったが,近年は量販店チェーンとの取引が増えている。両者の取引のやり方は大きく異なるので,今回量販店チェーン専用のシステムを開発することにして,概念データモデル及び関係スキーマを設計した。

〔設計の前提となる業務〕

1.社内の組織の特性

(1)物流拠点

 ①E社の製品物流の拠点であり,商品の在庫,梱包,出荷などの機能をもつ。

 ②物流拠点は,全国に6拠点あり,物流拠点ごとに複数の配送地域をもつ。

(2)配送地域

 ①物流拠点から顧客の納入先へ,1台のトラックで1日に配送できる範囲の地域であり,配送地域コードによって識別し,配送地域名をもつ。

 ②配送地域は,隣接する複数の郵便番号の地域を合わせた範囲に設定している。一つの郵便番号の地域が幾つかの配送地域に含まれることはない。

2.顧客の組織の特性

(1)チェーン法人

 ①量販店チェーンとは,ブランド,外観,サービス内容などに統一性をもたせて多店舗展開している医薬品の小売業であり,全国又は一部地方に集中して店舗展開している。

 ②チェーン法人はその法人であり,チェーン法人コードによって識別する。

(2)チェーンDC(DCは,物流センタの英語(Distribution Center)の頭文字)

 ①量販店チェーンの物流センタである。チェーンDCコード及びチェーンDC名を顧客から知らされ,立地するE社の配送地域を設定して登録し,チェーン法人コードとチェーンDCコードによって識別する。

 ②チェーンDCは,次に記すチェーン店舗の注文をまとめてE社を含む仕入先に発注(E社にとっての受注)する。

 ③E社は,受注した商品の全てを受注したチェーンDCに対して納入する。

 ④チェーンDCは,E社を含む仕入先から納入を受けた商品をチェーン店舗に配送する役割を果たしている。

(3)チェーン店舗

 ①量販店チェーンの個々の店舗である。チェーン店舗コード及びチェーン店舗名を顧客から知らされて登録し,チェーン法人コードとチェーン店舗コードによって識別する。

 ②チェーン店舗は,いずれか一つのチェーンDCに属している。チェーンDCには,通常数十から百数十のチェーン店舗が属している。

3.商品の特性

(1)商品

 ①E社が製造販売する医薬品であり,商品コードによって識別する。

 ②商品には,PB商品とNB商品があり,流通方法区分で分類している。

 ・PB商品は,E社と特定の量販店が協業する量販店独自ブランドの商品である。E社が広告宣伝費を掛けない代わりに,量販店に低価格で販売することができる商品である。PB商品は,どのチェーン法人のものかをもつ。

 ・NB商品は,E社が製造するメーカブランドの商品である。E社が広告宣伝費を掛けて消費者の認知を形成する商品である。NB商品は,売上金額のランクをもつ。

 ③商品の外観を荷姿と呼ぶ。荷姿にはケースとピースがある。荷姿は荷姿区分によって識別する。

 ・商品ごとに定まった数で箱詰めしたものをケース,ケースを開梱し,箱から出した一つ一つのものをピースと呼ぶ。

 ・商品ごとに,ケースに入っているピースの数を表す入数をもつ。

(2)商品の製造ロット

 ①商品ごとの製造単位である。製造ロットには,商品ごとに昇順な製造ロット番号を付与している。

 ②製造ロットには,いつ製造したか分かるように製造年月日を,いつまで使用できるか分かるように使用期限年月を記録している。

4.締め契機

 ①E社は受注を随時受け付けているが,受注後すぐに出荷するのではなく,受け付けた受注を締めて出荷指示を出すタイミングを定めている。このタイミングを締め契機という。

 ②締め契機は,平日に1日5回土曜日に1日3回,時刻を定めて設けており,年月日とその日の何回目の締めかを示す“回目”で識別している。

 ③チェーン法人ごとに適用する締め契機は,チェーン法人と協議の上で,週3回程度に設定している。

5.物流拠点の在庫
 E社では,在庫を引当在庫と払出在庫で把握している。

 ①引当在庫は,物流拠点,商品,製造ロットの別に,その時点の在庫数,引当済数,引当可能数を記録するもので,商品の引当てに用いる。

 ②払出在庫は,物流拠点,商品,製造ロット,荷姿の別に,その時点の在庫数(荷姿別在庫数)を記録するもので,商品の出庫の記録に用いる。

6.引当てのやり方

 ①古い製造ロットの商品から順に引き当てる。

 ②顧客によっては,ロット逆転禁止の取決めを交わしている。ロット逆転禁止とは,チェーンDCごとに,前回納入した製造ロットより古い商品を納入することを禁じることである。この取決めを交わしていることは,チェーン法人ごとに設定するロット逆転禁止フラグで判別する。ロット逆転禁止の取決めを交わしている顧客の場合,チェーンDCと商品の組合せに対して,最終で引き当てた製造ロット番号を記録する。

 ③引当ては,同じ締め契機の受注について,早く入った受注から順に行う。

7.出庫のやり方

 ①E社では,出庫を種まき方式で行っている。一般に種まき方式とは,行き先にかかわらず同じ品をまとめて出庫し,それを種に見立てて行き先別に仕分けることを品ごとに行うやり方である。

 ②出庫は,物流拠点ごとに締め契機の対象の受注に対して行う。

 ③出庫指示は商品別製造ロット別に出し,出庫実績は商品別製造ロット別荷姿別に記録する。

8.梱包のやり方
 商品の梱包のやり方は,顧客の方針で店舗別梱包又は商品カテゴリ別梱包のいずれかの指定を受ける。指定はチェーンDCごとにされ,梱包方法区分で判別する。

 ①店舗別梱包は,チェーンDCの仕分け作業の効率を優先するやり方である。

 ・チェーンDCは,E社を含む仕入先から納入された梱包を崩さずにチェーン店舗へ送る。

 ・これを可能にするために,チェーンDCが担当するチェーン店舗ごとの梱包による納入が求められる。

 ・店舗別梱包では,受注で指定される梱包対象の店舗は一つである。

 ②商品カテゴリ別梱包は,チェーン店舗での品出し作業の効率を優先するやり方である。

 ・チェーン店舗の棚は,風邪薬,胃腸薬,目薬など商品カテゴリ別である。

 ・チェーンDCは,E社を含む仕入先から納入を受けた商品をまとめて,棚と同じ商品カテゴリ別に梱包し直して店舗へ送る。

 ・これを可能にし,かつ,チェーンDCでの仕分け作業を簡易にするために,商品カテゴリ別の梱包による納入が求められる。

 ・商品カテゴリは,どの顧客も似ているが微妙に異なり,チェーン法人コードと商品カテゴリコードによって識別する。

 ・商品カテゴリコード及び商品カテゴリ名は顧客が使っている値を用いる。

 ・また,あらかじめどの商品をどの商品カテゴリにするかを知らされているので,商品カテゴリの明細として商品を設定している。

9.業務の流れと情報
 業務の流れを図1に示す。業務の流れの中で用いられる情報を次に述べる。

 


図1 業務の流れ

(1)受注

 ①顧客から随時何度でも受け付け,締め契機まで蓄積する。

 ②1回の受注に複数の商品を指定できる。

 ③受注ごとに,受注番号を付与し,受注年月日時刻を記録する。

 ④受注明細では,受注明細番号を付与し,商品とその数を指定する。

 ⑤在庫引当ての成否は,受注明細に記録する。

(2)出荷指示

 ①締め契機で在庫引当てに成功した受注を集約した情報である。出荷指示に基づいて,一連で出庫,梱包,出荷を実施する。

 ②出荷指示は,納入先別に行う。梱包を分ける単位を示す出荷指示梱包明細,梱包を分けた中に入れる商品を示す出荷指示梱包内商品明細の3階層の形式をとる。

 ③出荷指示ごとに,出荷指示番号を付与し,適用した締め契機,出荷指示対象の納入先を記録する。対象の受注に出荷指示番号を記録する。

 ④出荷指示梱包明細ごとに,出荷指示梱包明細番号を付与し,梱包方法によって,店舗別梱包の場合は梱包対象チェーン店舗を,商品カテゴリ別梱包の場合は商品カテゴリを設定する。

 ⑤出荷指示梱包内商品明細ごとに,梱包すべき商品について製造ロット別に出荷指示数を設定する。

(3)出庫指示

 ①物流拠点ごとに,同じ締め契機の,全ての納入先の出荷指示を集約し,物流拠点の倉庫から出荷対象の商品を出すための情報である。

 ②出庫指示には,出庫指示番号を付与し,対象の物流拠点と適用した締め契機を記録する。対象の出荷指示に出庫指示番号を記録する。

 ③出庫指示明細には,出庫指示明細番号を付与し,製造ロット別の商品と出庫指示数を設定する。

(4)出庫実績

 ①出庫指示明細で指示された商品の出庫指示数を,幾つのケースと幾つのピースで出庫したかの実績である。

 ②出庫実績には出庫実績番号を付与し,荷姿区分で分類して,ケースを出庫した出庫実績には出庫ケース数を,ピースを出庫した出庫実績には出庫ピース数を記録する。

(5)梱包実績

 ①出庫された商品を,出荷指示梱包明細に基づいて配送できるように段ボール箱に詰めた実績であり,段ボール箱ごとに梱包実績番号を付与する。

 ②梱包実績にはケース梱包実績とピース梱包実績がある。いずれの実績かは,段ボール箱区分で分類する。

 ③ケース梱包実績は,どのケース出庫実績によるものかを関連付ける。

 ④ピース梱包実績は,一つ又は複数の種類の商品の詰め合わせであり,どのピース出庫実績から幾つの商品を構成したかのピース梱包内訳を記録する。

(6)出荷実績

 ①出荷指示の単位に梱包を納入先別に配送した実績である。

 ②出荷実績には,車両番号と出荷年月日時刻を記録する。

 ③出荷実績に対応する梱包実績に,どの出荷実績で出荷されたかを記録する。

 

概念データモデル及び関係スキーマの設計

1.概念データモデル及び関係スキーマの設計方針

(1)関係スキーマは第3正規形にし,多対多のリレーションシップは用いない。

(2)リレーションシップが1対1の場合,意味的に後からインスタンスが発生する側に外部キー属性を配置する。

(3)概念データモデルでは,リレーションシップについて,対応関係にゼロを含むか否かを表す“⚪️”又は“⚫️"は記述しない。

(4)実体の部分集合が認識できる場合,その部分集合の関係に固有の属性があるときは部分集合をサブタイプとして切り出す。

(5)サブタイプが存在する場合,他のエンティティタイプとのリレーションシップは,スーパタイプ又はいずれかのサブタイプの適切な方との間に設定する。

(6)概念データモデル及び関係スキーマは,マスタ及び在庫の領域と,トランザクションの領域を分けて作成し,マスタとトランザクションの間のリレーションシップは記述しない。

2.設計した概念データモデル及び関係スキーマ
 マスタ及び在庫の領域の概念データモデルを図2に,トランザクションの領域の概念データモデルを図3に,マスタ及び在庫の領域の関係スキーマを図4に,トランザクション領域の関係スキーマを図5に示す。

 


図2 マスタ及び在庫の領域の概念データモデル(未完成)


図3 トランザクションの領域の概念データモデル(未完成)


図4 マスタ及び在庫の領域の関係スキーマ(未完成)


図5 トランザクションの領域の関係スキーマ(未完成)

 

設計変更の内容
 設計は,全ての量販店がチェーンDCをもち,チェーンDCから受注し,チェーンDCに納入することを前提にしてきた。しかし,大手の量販店が,地方の量販店と合併することによって,暫定的又は恒久的にチェーンDCのないチェーン店舗が発生することが判明した。このような場合,量販店の本部又は支部から受注し,チェーン店舗に直接納入する必要がある。そこで,当初の検討と合わせて運用できるように,顧客の組織について次の設計変更を行うことにした。

1.顧客の組織の設計変更

(1)チェーン本支部

 ①新たな受注先である量販店の本部又は支部をチェーン本支部と呼ぶ。

 ②受注し得るチェーン本支部について,コード及び名称を顧客から知らされて登録し,チェーン法人コードとチェーン本支部コードによって識別する。

(2)チェーン組織

 ①受注は,チェーンDC又はチェーン本支部から受けることになったので,こその両者を併せて受注先と呼ぶことにする。

 ②納入は,チェーンDC又は直接納入する対象のチェーン店舗(以下,直納対象チェーン店舗という)に行うので,この両者を併せて納入先と呼ぶことにする。

 ③さらに,受注先と納入先を併せてチェーン組織と呼ぶことにする。

 ④チェーン組織には,チェーン法人を超えて一意に識別できるチェーン組織コードを付与し,どのチェーン法人のチェーン組織なのかを設定する。

 ⑤受注先と納入先は,それぞれチェーン組織の一部なので,受注先に該当するチェーン組織には受注先フラグを,納入先に該当するチェーン組織には納入先フラグを設定する。

 ⑥受注先は,受注の対象の納入先が全て分かるようにする。また,その受注先がチェーンDCかチェーン本支部のいずれかを示す受注先区分を設定する。

 ⑦配送地域は,納入先に設定し,チェーンDCからは外す。

(3)チェーン店舗

 ①設計変更前に対象にしていたチェーン店舗を,店舗別梱包対象チェーン店舗に呼び替える。

 ②チェーン店舗は,スコープを広げて,店舗別梱包対象チェーン店舗と直納対象チェーン店舗を併せたものにする。また,そのチェーン店舗が店舗別梱包対象チェーン店舗か直納対象チェーン店舗のいずれかを示すチェーン店舗区分を設定する。

2.梱包のやり方についての設計変更
 直納対象チェーン店舗への納入では,梱包方法の指定は受けない。これに伴って,梱包方法区分に指定なしの分類を追加する。

3.顧客についての概念データモデル及び関係スキーマの検討内容
 設計変更の内容に基づいて,顧客に関する部分を切り出して検討した。設計変更した顧客の概念データモデルを図6に,設計変更した顧客の関係スキーマを図7に示す。

 


図6 設計変更した顧客の関係スキーマ(未完成)


図7 設計変更した顧客の関係スキーマ(未完成)

 解答に当たっては,巻頭の表記ルールに従うこと。ただし,エンティティタイプ間の対応関係にゼロを含むか否かの表記は必要ない。
 なお,属性名は,それぞれ意味を識別できる適切な名称とすること。また,関係スキーマに入れる属性名を答える場合,主キーを表す下線,外部キーを表す破線の下線についても答えること。

設問1 〔設計の前提となる業務〕に基づいて設計した概念データモデル及び関係スキーマについて(1)〜(4)に答えよ。

 

(1)図2中の  ア  に入れる適切なエンティティタイプ名を答えよ。また,図2に欠落しているリレーションシップを補って図を完成させよ。

 

解答・解説
解答例

 チェーン法人別締め契機

解説

 ー

 

(2)図3中の  イ  に入れる適切なエンティティタイプ名を答えよ。また,図3に欠落しているリレーションシップを補って図を完成させよ。

 

解答・解説
解答例

 ピース梱包内訳

解説

 ー

 

(3)図4中の  a    f  に入れる一つ又は複数の適切な属性名を補って関係スキーマを完成させよ。

 

解答・解説
解答例

 a:商品コード,チェーン法人コード
 b:商品コード,ランク
 c:チェーン法人コード,商品カテゴリコード,商品カテゴリ名
 d:締め年月日,回目,チェーン法人コード
 e:拠点コード,商品コード,製造ロット番号,在庫数,引当済数,引当可能 数
 f:拠点コード,商品コード,製造ロット番号,荷姿区分,荷姿別在庫数

解説

 ー

 

(4)図5中の  g    v  に入れる一つ又は複数の適切な属性名を補って関係スキーマを完成させよ。

 

解答・解説
解答例

 g:出荷指示番号
 h:
 ・受注番号,梱包対象チェーン店舗コード
 ・受注番号,チェーン法人コード梱包対象チェーン店舗コード
 i:在庫引当成否
 j:締め年月日回目出庫指示番号
 k:
 ・梱包対象チェーン店舗コード
 ・チェーン法人コード梱包対象チェーン店舗コード
 l:
 ・商品カテゴリコード
 ・チェーン法人コード商品カテゴリコード
 m:商品コード,製造ロット番号,出荷指示数
 n:締め年月日回目拠点コード
 o:製造ロット番号,出庫指示数
 p:出庫指示番号出庫指示明細番号荷姿区分
 q:出庫実績番号,出庫ケース数
 r:出庫実績番号,出庫ピース数
 s:出荷指示番号出荷指示梱包明細番号,段ボール箱区分,出荷実績番号
 t:出庫実績番号
 u:梱包実績番号,出庫実績番号,詰合せ数
 v:出荷指示番号車両番号,出荷年月日時刻

解説

 ー

 

設問2 〔設計変更の内容〕について,(1)〜(3)に答えよ。

 

(1)図6は,幾つかのスーパタイプとサブタイプの間のリレーションシップが欠落している。欠落しているリレーションシップを補って図を完成させよ。

 

解答・解説
解答例

解説

 ー

 

(2)図7中の  あ    く  に入れる一つ又は複数の適切な属性名を補って関係スキーマを完成させよ。

 

解答・解説
解答例

 あ:チェーン組織コード,受注先フラグ,納入先フラグ
 い:受注先チェーン組織コード,受注先区分
 う:納入先チェーン組織コード,配送地域コード受注先チェーン組織コード
 え:チェーン組織コード
 お:チェーン本支部名,受注先チェーン組織コード
 か:チェーン店舗区分,チェーン店舗名
 き:チェーン法人コード,店舗別梱包対象チェーン店舗コード
 く:チェーン法人コード,直納対象チェーン店舗コード,納入先チェーン組織コード

解説

 ー

 

(3)設計変更前に,図6に示したもの以外のエンティティタイプで,チェーンDCを参照していたエンティティタイプが,図2に一つと図3に二つの合計三つある。これら三つのエンティティタイプは,設計変更によって参照するエンティティタイプが,チェーンDCから図6に示した別のエンティティタイプになる。次の表の①〜③に,設計変更前にチェーンDCを参照していた三つのエンティティタイプ名とそれぞれに対応する設計変更後の参照先エンティティタイプ名を答えよ。

  設計変更前にチェーンDCを参照していた
三つのエンティティタイプ
それぞれに対応する設計変更後の
参照先エンティティタイプ
   
   
   

 

解答・解説
解答例

 設計変更前にチェーン DC を参照していた三つのエンティティタイプ
 ① :納入商品最終ロット
 ② :受注
 ③ :出荷指示

 それぞれに対応する設計変更後の 参照先エンティティタイプ
 ① :納入先
 ② :受注先
 ③ :納入先

解説

 ー

 

IPA公開情報

出題趣旨

 概念データモデリングでは,データベースの物理的な設計とは異なり,実装上の制約に左右されずに実務の 視点に基づいて,対象領域から管理対象を正しく見極め,モデル化する必要がある。概念データモデリングで は,業務内容などの実世界の情報を総合的に理解・整理し,その結果を概念データモデルに反映する能力が求められる。
 本問では,中堅市販薬メーカの製品物流業務を例として,与えられた状況から概念データモデリングを行う 能力を問う。具体的には,①トップダウンにエンティティタイプ及びリレーションシップを見抜く能力,②ボ トムアップにエンティティタイプ及び関係スキーマを分析する能力,③設計変更に基づき概念データモデル及び関係スキーマの適切な変更を行う能力を評価する。

採点講評

 問 2 では,中堅市販薬メーカの製品物流業務を題材に,現状と問題解決のために変更した概念データモデルと関係スキーマ,設計変更後の参照先エンティティタイプについて出題した。全体として正答率は高かった。設問 1 では,全体的に正答率は高かったものの,出荷指示梱こん包明細と梱包実績のリレーションシップ及び対応する外部キーの正答率が低かった。業務がどのように連鎖しているか,業務の連鎖を外部キーとしてどのように実現しているかを注意深く読み取ってほしい。
 設問 2 では,(1)の正答率は高かったが,(3)については不十分な解答が散見された。設計変更後の参照先エンティティタイプの役割を注意深く読み取り,影響するトランザクションのエンティティタイプを見極めてほしい。
 全体的に,状況記述を丁寧に読み取れているものの,マスタとトランザクション間のリレーションシップや求められる属性の理解が不十分だったと思われる。注意深く検討する習慣を身に付けてほしい。また,概念データモデリングの対象領域全体を把握するために,全体のデータモデルを記述することが重要である。日常業務での実践の積み重ねを期待したい。

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