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企業経営理論 令和3年度 第38問

 

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 ①顧客リレーションシップの構築は、マーケティングにおける最も重要な課題の 1つである。企業は優れた顧客価値と顧客満足の提供を通して②顧客ロイヤルティを形成し、長期にわたって顧客から大きな見返りが得られるようマーケティングを実践する。

(設問 1 )文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. ある顧客が東京から大阪までの移動においてA社の航空サービスしか利用しないという場合、この顧客におけるA社の顧客シェアは 100 %となる。この場合の顧客シェアは、東京-大阪便を提供する全航空サービスに占めるA社の利用割合を意味しており、マーケティング上、新幹線や夜行バスなどの異なる手段も含む移動サービスに占めるA社の利用割合を考える必要はない。
  2. インターネット通販と実店舗とで同一製品を扱う場合、製品の機能や美しさといったベネフィット面は同じであるのに対し、購入に要する時間や労力といったコスト面はインターネット通販において大幅に低下する。これにより、インターネット通販はあらゆる顧客に対し高い顧客価値を実現する。
  3. 企業の既存顧客および潜在顧客の生涯価値を総計したものは顧客生涯価値と呼ばれ、企業の顧客基盤がどれほどの将来価値を持っているかを測る指標となる。当然のことながら、ロイヤルな顧客が高所得であるほど顧客生涯価値は上昇する。
  4. 顧客価値とは、ある顧客が自社にとってどの程度利益をもたらす顧客であるか、すなわち優良顧客であるかを表すものであり、企業は高い顧客価値を創造することによって、当該顧客の生涯価値を高めることができる。
  5. 顧客満足は、製品の購入前あるいは使用前に抱いた期待と製品使用後の実際に得られたパフォーマンスとの差によって決定されるが、製品の使用前に抱く期待が直接的に満足度に影響を及ぼすことも指摘されている。この場合、事前に製品パフォーマンスやベネフィットの評価がしにくいなど消費経験の曖昧さが高いほど、期待が直接的に満足度へ及ぼす影響は大きくなる。

(設問 2 )文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 顧客価値と顧客満足が企業によって実現されることを通してその企業のブランドにロイヤルティを形成した顧客には、真のロイヤルティを有する顧客と見せかけのロイヤルティを有する顧客が含まれる。
  2. 自社製品を顧客に販売するときの収益性分析を行う場合、対象となる顧客は購買履歴が蓄積された顧客であり、真のロイヤルティを有する顧客と潜在的ロイヤルティを有する顧客が含まれる。
  3. 新規顧客の獲得を目指す企業にとって、潜在的ロイヤルティを有する顧客セグメントは、製品購入の手段や状況が改善されれば有望な市場となり得るため、企業は潜在的ロイヤルティを有するすべての顧客をリスト化し、一人一人に積極的に勧誘を行うべきである。
  4. 見せかけのロイヤルティを有する赤字顧客には、特定のサービス提供を控えるなどして最低限の収益水準を確保することが望ましい。あるいは、サービス手数料などの値上げによって退出を促すことも重要である。

解答・解説

解答

 1:オ 2:エ

解説

設問1
  1. ある顧客が東京から大阪までの移動においてA社の航空サービスしか利用しないという場合、この顧客におけるA社の顧客シェアは 100 %となる。この場合の顧客シェアは、東京-大阪便を提供する全航空サービスに占めるA社の利用割合を意味しており、マーケティング上、新幹線や夜行バスなどの異なる手段も含む移動サービスに占めるA社の利用割合を考える必要はない。
    不適切です。

  2. インターネット通販と実店舗とで同一製品を扱う場合、製品の機能や美しさといったベネフィット面は同じであるのに対し、購入に要する時間や労力といったコスト面はインターネット通販において大幅に低下する。これにより、インターネット通販はあらゆる顧客に対し高い顧客価値を実現する。
    不適切です。

  3. 企業の既存顧客および潜在顧客の生涯価値を総計したものは顧客生涯価値と呼ばれ、企業の顧客基盤がどれほどの将来価値を持っているかを測る指標となる。当然のことながら、ロイヤルな顧客が高所得であるほど顧客生涯価値は上昇する。
    不適切です。

  4. 顧客価値とは、ある顧客が自社にとってどの程度利益をもたらす顧客であるか、すなわち優良顧客であるかを表すものであり、企業は高い顧客価値を創造することによって、当該顧客の生涯価値を高めることができる。
    不適切です。

  5. 顧客満足は、製品の購入前あるいは使用前に抱いた期待と製品使用後の実際に得られたパフォーマンスとの差によって決定されるが、製品の使用前に抱く期待が直接的に満足度に影響を及ぼすことも指摘されている。この場合、事前に製品パフォーマンスやベネフィットの評価がしにくいなど消費経験の曖昧さが高いほど、期待が直接的に満足度へ及ぼす影響は大きくなる。
    適切です。

設問2
  1. 顧客価値と顧客満足が企業によって実現されることを通してその企業のブランドにロイヤルティを形成した顧客には、真のロイヤルティを有する顧客と見せかけのロイヤルティを有する顧客が含まれる。
    不適切です。

  2. 自社製品を顧客に販売するときの収益性分析を行う場合、対象となる顧客は購買履歴が蓄積された顧客であり、真のロイヤルティを有する顧客と潜在的ロイヤルティを有する顧客が含まれる。
    不適切です。

  3. 新規顧客の獲得を目指す企業にとって、潜在的ロイヤルティを有する顧客セグメントは、製品購入の手段や状況が改善されれば有望な市場となり得るため、企業は潜在的ロイヤルティを有するすべての顧客をリスト化し、一人一人に積極的に勧誘を行うべきである。
    不適切です。

  4. 見せかけのロイヤルティを有する赤字顧客には、特定のサービス提供を控えるなどして最低限の収益水準を確保することが望ましい。あるいは、サービス手数料などの値上げによって退出を促すことも重要である。
    適切です。

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