資格部

資格・検定の試験情報、対策方法、問題解説などをご紹介

弁理士 特許・実用新案 R4-9

 

 特許法に規定する実施権等に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

  1. 甲の特許権についての専用実施権者乙は、甲の承諾を得なければ、丙に対して当該専用実施権について通常実施権を許諾することができないが、丁が当該専用実施権を侵害していた場合、甲の承諾を得ることなく丁に対して損害賠償請求権を行使することができる。
  2. 特許権者甲の特許権を目的として、乙が質権を設定し登録した。その後、甲及び乙が、甲から質権設定者乙にその特許権を譲渡する契約を締結し、移転の登録をした場合は、特許権者と質権設定者がいずれも乙となるので、その質権について消滅の登録をせずとも消滅の効力が生じる。
  3. 専用実施権についての通常実施権は、特許庁長官又は経済産業大臣の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにするとき、特許権者及び専用実施権者の承諾を得たとき、並びに、相続その他の一般承継のときに限り、移転することができる。
  4. 甲は発明イをし、発明イに係る特許出願Aをした。この場合、乙が特許出願Aに係る発明イの内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願Aに係る発明イの内容を知らないでその発明をした者から知得した場合であっても、乙が甲より後に発明イをしたときは、乙に先使用による通常実施権は認められない。
  5. 特許権者は、専用実施権者及び質権者がある場合は、他に通常実施権者があるときでも、専用実施権者及び質権者の承諾があれば、その特許権を放棄することができる。

解答・解説

解答

 4

解説

  1. 甲の特許権についての専用実施権者乙は、甲の承諾を得なければ、丙に対して当該専用実施権について通常実施権を許諾することができないが、丁が当該専用実施権を侵害していた場合、甲の承諾を得ることなく丁に対して損害賠償請求権を行使することができる。
    ⭕️ 特77条4項、民709条
    専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。[特77条4項]
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。[民709条]

  2. 特許権者甲の特許権を目的として、乙が質権を設定し登録した。その後、甲及び乙が、甲から質権設定者乙にその特許権を譲渡する契約を締結し、移転の登録をした場合は、特許権者と質権設定者がいずれも乙となるので、その質権について消滅の登録をせずとも消滅の効力が生じる。
    ⭕️ 民520条、特98条1項3号
    債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。[民520条]
    次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
    三 特許権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限[特98条1項3号]

  3. 専用実施権についての通常実施権は、特許庁長官又は経済産業大臣の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにするとき、特許権者及び専用実施権者の承諾を得たとき、並びに、相続その他の一般承継のときに限り、移転することができる。
    ⭕️ 特94条1項
    通常実施権は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。[特94条1項]

  4. 甲は発明イをし、発明イに係る特許出願Aをした。この場合、乙が特許出願Aに係る発明イの内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願Aに係る発明イの内容を知らないでその発明をした者から知得した場合であっても、乙が甲より後に発明イをしたときは、乙に先使用による通常実施権は認められない。
    ❌ 特79条
    特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。[特79条]

  5. 特許権者は、専用実施権者及び質権者がある場合は、他に通常実施権者があるときでも、専用実施権者及び質権者の承諾があれば、その特許権を放棄することができる。
    ⭕️ 特97条1項
    特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。[特97条1項]

前問 一覧 次問