資格部

資格・検定の試験情報、対策方法、問題解説などをご紹介

弁理士 特許・実用新案 R2-18

 

 特許出願の審査及び出願公開等に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。
 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。

  1. 甲は、特許出願Aの一部を分割して新たな特許出願Bをし、出願Bに係る特許を受ける権利を乙に承継した。その後、出願Aについて拒絶の理由が通知されたが、甲は乙に出願Aについて通知された拒絶の理由を知らせなかった。出願Aについて拒絶の理由が通知された後、出願Aが出願公開される前に、乙が出願Bについて出願審査の請求をした場合、出願Bについての拒絶の理由が出願Aについての拒絶の理由と同一であるときは、特許法第50条の2の規定によれば、審査官は、出願Bについて、既に通知された拒絶の理由と同一である旨を、その拒絶の理由と併せて通知しなければならない。
  2. 甲がある物質Aの製造方法についての特許権者である場合において、乙がその物質Aについての別の製造方法を発明したと称して特許出願をし、その査定前に物質Aの製造行為をした。甲は、乙の製造方法は甲の特許権に係る製造方法と同一であることを理由として、裁判所に乙に対する仮処分命令の申立てを行った。その後、乙の特許出願について拒絶をすべき旨の査定の謄本が送達された場合であっても、裁判所は、必要があると認めるときは、当該査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。
  3. 特許出願Aについて、出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかったため、出願Aが取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報が発行された。その後、当該期間内に出願審査の請求ができなかったことについて正当な理由があるとして、出願審査の請求がされ、出願Aは、特許権の設定登録がされた。この場合において、出願Aが取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後、出願Aについて出願審査の請求があった旨が掲載された特許公報の発行前に、善意に日本国内において当該発明の実施である事業を開始した者は、その実施をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
  4. 甲のした特許出願Aについて、出願公開があった後、甲が出願Aに係る発明イの内容を記載した書面を提示して、出願Aに係る発明イを実施している第三者乙に対して警告をした場合であっても、乙が、出願Aに係る発明イの内容を知らないで自ら発明イをし、出願Aの出願の際現に日本国内において発明イの実施である事業の準備をしていたときは、出願Aに係る特許権の設定の登録がされても、乙は補償金を支払う義務を負わないことがある。
  5. 特許権者甲が乙に対して提起した、甲の保有する補償金請求権に基づく補償金請求訴訟において、乙が、甲から発明を実施した行為を組成したものとして主張された物又は方法の具体的態様を否認するとき、乙は、当該物又は方法に乙の営業秘密が含まれることを理由として、自己の行為の具体的態様を明らかにしなくても良い場合がある。

解答・解説

解答

 1

解説

  1. 甲は、特許出願Aの一部を分割して新たな特許出願Bをし、出願Bに係る特許を受ける権利を乙に承継した。その後、出願Aについて拒絶の理由が通知されたが、甲は乙に出願Aについて通知された拒絶の理由を知らせなかった。出願Aについて拒絶の理由が通知された後、出願Aが出願公開される前に、乙が出願Bについて出願審査の請求をした場合、出願Bについての拒絶の理由が出願Aについての拒絶の理由と同一であるときは、特許法第50条の2の規定によれば、審査官は、出願Bについて、既に通知された拒絶の理由と同一である旨を、その拒絶の理由と併せて通知しなければならない。
    ❌ 特50条の2
    審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。[特50条の2]

  2. 甲がある物質Aの製造方法についての特許権者である場合において、乙がその物質Aについての別の製造方法を発明したと称して特許出願をし、その査定前に物質Aの製造行為をした。甲は、乙の製造方法は甲の特許権に係る製造方法と同一であることを理由として、裁判所に乙に対する仮処分命令の申立てを行った。その後、乙の特許出願について拒絶をすべき旨の査定の謄本が送達された場合であっても、裁判所は、必要があると認めるときは、当該査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。
    ⭕️ 特54条2項
    訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。[特54条2項]

  3. 特許出願Aについて、出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかったため、出願Aが取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報が発行された。その後、当該期間内に出願審査の請求ができなかったことについて正当な理由があるとして、出願審査の請求がされ、出願Aは、特許権の設定登録がされた。この場合において、出願Aが取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後、出願Aについて出願審査の請求があった旨が掲載された特許公報の発行前に、善意に日本国内において当該発明の実施である事業を開始した者は、その実施をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
    ⭕️ 特48条の3 8項
    第五項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第五項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。[特48条の3 8項]

  4. 甲のした特許出願Aについて、出願公開があった後、甲が出願Aに係る発明イの内容を記載した書面を提示して、出願Aに係る発明イを実施している第三者乙に対して警告をした場合であっても、乙が、出願Aに係る発明イの内容を知らないで自ら発明イをし、出願Aの出願の際現に日本国内において発明イの実施である事業の準備をしていたときは、出願Aに係る特許権の設定の登録がされても、乙は補償金を支払う義務を負わないことがある。
    ⭕️ 特79条
    特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。[特79条]

  5. 特許権者甲が乙に対して提起した、甲の保有する補償金請求権に基づく補償金請求訴訟において、乙が、甲から発明を実施した行為を組成したものとして主張された物又は方法の具体的態様を否認するとき、乙は、当該物又は方法に乙の営業秘密が含まれることを理由として、自己の行為の具体的態様を明らかにしなくても良い場合がある。
    ⭕️ 特65条6項で準用する特104条の2
    特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。[特104条の2]

前問 一覧 次問