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弁理士 特許・実用新案 R2-16

 

 以下の事例について、次のうち、正しいものは、どれか。なお、1〜5はそれぞれ独立しているものとし、事例や1〜5に示されていない事実をあえて仮定する必要はない。
【事例】
 甲は、「合金Aを用いて製品Bを製造する方法」という発明に係る特許イの特許権者である。乙は、業として、合金Aを製造して丙に販売している。丙は、業として、その合金Aを用いて特許イの方法により製品Bを製造し、丁に販売している。丁は、業として、その製品Bを日本国内の顧客に販売している。なお、乙、丙、及び丁は、特許イについていなかる実施権も有していないものとする。

  1. 甲が、丁に対して特許法第102条第3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」を超える損害賠償を請求した場合に、丁に故意又は重大な過失がなかったとき、裁判所は、これを参酌して、損害の賠償の額を「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」より少ない額に軽減することができる。
  2. 甲自身は特許イの発明を実施していない場合、特許法第102条第1項第1号の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」は存在しないから、同条項に基づいて損害の賠償の額を算定し請求することができず、特許法第102条第3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」についても、請求することができない。
  3. 特許イは、製品Bを製造する方法の発明の特許であり、丁は製品Bを販売しているだけであるため、甲は、丁に対して製品Bの在庫の廃棄を請求することができない。
  4. 乙が、合金Aが特許イの方法により製品Bを製造するために用いられていることを知らずに合金Aを製造して販売した場合であっても、合金Aが、特許イの方法にのみ用いられる合金であるときは、甲は、乙に対して合金Aの製造の差止を請求することができる。
  5. 丙は、特許イの方法を用いて外国で製品Bを製造し、丁は、業として、当該製品Bを輸入して日本国内の顧客に販売している場合、甲は、丁に対して当該製品Bの輸入の差止を請求することができない。

解答・解説

解答

 4

解説

  1. 甲が、丁に対して特許法第102条第3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」を超える損害賠償を請求した場合に、丁に故意又は重大な過失がなかったとき、裁判所は、これを参酌して、損害の賠償の額を「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」より少ない額に軽減することができる。
    ❌ 特102条3項・5項
    3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
    5 第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。[特102条3項・5項]

  2. 甲自身は特許イの発明を実施していない場合、特許法第102条第1項第1号の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」は存在しないから、同条項に基づいて損害の賠償の額を算定し請求することができず、特許法第102条第3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」についても、請求することができない。
    ❌ 特102条3項
    特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。[特102条3項]

  3. 特許イは、製品Bを製造する方法の発明の特許であり、丁は製品Bを販売しているだけであるため、甲は、丁に対して製品Bの在庫の廃棄を請求することができない。
    ❌ 特100条2項
    特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。[特100条2項]

  4. 乙が、合金Aが特許イの方法により製品Bを製造するために用いられていることを知らずに合金Aを製造して販売した場合であっても、合金Aが、特許イの方法にのみ用いられる合金であるときは、甲は、乙に対して合金Aの製造の差止を請求することができる。
    ⭕️ 特101条4号
    次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
    四 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為[特101条4号]

  5. 丙は、特許イの方法を用いて外国で製品Bを製造し、丁は、業として、当該製品Bを輸入して日本国内の顧客に販売している場合、甲は、丁に対して当該製品Bの輸入の差止を請求することができない。
    ❌ 特2条3項3号、特100条1項
    この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
    三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為[特2条3項3号]
    特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。[特100条1項]

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