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弁理士 意匠 R4-9

 

 甲は、意匠権Aの意匠権者であり、意匠権Aに係る登録意匠の実施品である製品aを製造販売している。乙は、意匠権Aの設定の登録後に、意匠権Aの登録意匠に類似する意匠の実施品である製品bの製造販売を開始した。なお、意匠権Aについて、意匠登録出願後に補正はされておらず、専用実施権の設定はないものとする。
 次のうち、誤っているものは、どれか。

  1. 甲が、乙に対し、製品bの製造販売の差止請求をするに際し、製品bを製造するための工作機用制御プログラムを記録した記録媒体の廃棄を併せて請求する場合、この廃棄に係る請求が裁判において認容されることがある。
  2. 甲は、乙に対し、製品bの製造販売の差止請求をする場合でなければ、製品bの製造販売に係る損害賠償を請求することができない。
  3. 乙の取引先である丙が、製品bのみに用いる部品cを業として輸入している場合、甲は、丙に対して、意匠権Aに基づき、部品cの輸入の差止めを請求することができる。
  4. 乙の取引先である丙が、乙から製品bを仕入れて、業として製品bを輸出するために、自社の倉庫において製品bを保管している場合、当該保管は、意匠権Aを侵害するものとみなされる。
  5. 乙は、意匠権Aに係る登録意匠を知らないで、自ら製品bに係る意匠を創作し、意匠権Aに係る意匠登録出願の際に、現に日本国内において製品bの製造販売事業の準備をしていた。この場合、甲は、乙による製品bの製造販売に対して、意匠権Aに基づく差止請求権を行使できない。

解答・解説

解答

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解説

  1. 甲が、乙に対し、製品bの製造販売の差止請求をするに際し、製品bを製造するための工作機用制御プログラムを記録した記録媒体の廃棄を併せて請求する場合、この廃棄に係る請求が裁判において認容されることがある。
    ⭕️ 意37条2項
    意匠権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物品、建築物若しくは画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む。第六十四条及び第六十五条第一号を除き、以下同じ。)若しくは画像を記録した記録媒体若しくは内蔵する機器(以下「一般画像記録媒体等」という。)又はプログラム等(画像を表示する機能を有するプログラム等を除く。以下同じ。)若しくはプログラム等を記録した記録媒体若しくは記憶した機器(以下「プログラム等記録媒体等」という。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。[意37条2項]

  2. 甲は、乙に対し、製品bの製造販売の差止請求をする場合でなければ、製品bの製造販売に係る損害賠償を請求することができない。
    ❌ 民709条
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。[民709条]

  3. 乙の取引先である丙が、製品bのみに用いる部品cを業として輸入している場合、甲は、丙に対して、意匠権Aに基づき、部品cの輸入の差止めを請求することができる。
    ⭕️ 意38条1号イ、意37条1項
    次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
    一 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等について業として行う次のいずれかに該当する行為
    イ 当該製造にのみ用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為[意38条1号イ]
    意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。[意37条1項]

  4. 乙の取引先である丙が、乙から製品bを仕入れて、業として製品bを輸出するために、自社の倉庫において製品bを保管している場合、当該保管は、意匠権Aを侵害するものとみなされる。
    ⭕️ 意38条3号
    次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
    三 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品を業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為[意38条3号]

  5. 乙は、意匠権Aに係る登録意匠を知らないで、自ら製品bに係る意匠を創作し、意匠権Aに係る意匠登録出願の際に、現に日本国内において製品bの製造販売事業の準備をしていた。この場合、甲は、乙による製品bの製造販売に対して、意匠権Aに基づく差止請求権を行使できない。
    ⭕️ 意29条
    意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をし、又は意匠登録出願に係る意匠を知らないでその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をした者から知得して、意匠登録出願の際(第九条の二の規定により、又は第十七条の三第一項(第五十条第一項(第五十七条第一項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により、その意匠登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの意匠登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する。[意29条]

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