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弁理士 意匠 R4-3

 

 甲は、カップ型容器にアイスクリーム材を充填して冷凍成形した「容器付冷菓」の発明及び意匠イを完成した。「容器付冷菓」の意匠イは、アイスクリーム材と容器とが一体的な状態で市場に流通する1つの意匠であり、2以上の意匠を包含しない。「アイスクリーム用容器」の意匠ロは、意匠イの一部を構成する容器部分と同一の意匠である。
 この場合において、意匠法第3条の2(意匠登録の要件)又はハーグ協定のジュネーブ改正協定の手続に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、各設問で言及した条件のみに基づいて判断し、他の条件は考慮しないこととする。また、文中に記載した優先権の主張は有効なものとし、特に文中に記載した場合を除いては、各出願は、いかなる優先権の主張も伴わず、分割又は変更に係るものでも、冒認の出願でも、補正後の意匠についての新出願でもなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされていないものとし、また、名義変更は行わないものとし、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく特例を考慮しないものとする。

  1. 甲は、意匠イに係る意匠登録出願Aをし、その1月後、甲のグループ企業の乙が意匠ロに係る意匠登録出願Bをした。その後、出願Aについて意匠登録がされて意匠公報が発行された。出願Aと出願Bの創作者が同一の場合、意匠ロに係る出願Bは、意匠イに係る出願Aの意匠公報を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶されない。
  2. 甲は、令和4年1月1日にパリ条約の同盟国のX国へ、意匠イについて、正規かつ最先の意匠登録出願Aをした。乙は、令和4年2月1日に意匠ロに類似する意匠ハについて意匠登録出願Bを日本国にした。甲は、令和4年2月3日に意匠イに係る出願Aを基礎とするパリ条約による優先権の主張を伴う意匠登録出願Cを日本国に行い、出願Cについて意匠公報が発行された。この場合、意匠ハに係る出願Bは、意匠イに係る出願Cの意匠公報を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶される。
  3. 甲は、特許請求の範囲及び明細書に「容器付冷菓」の発明が記載され、その図面に意匠イが表された特許協力条約(PCT)に基づく国際特許出願Aをした。17月後、乙は意匠ロに類似する「アイスクリーム用容器」の意匠ハに係る意匠登録出願Bを日本国にした。その後、甲は出願Aを国内移行手続し、出願Aは特許法第184条の9に規定する国内公表がされた。出願Aの国内公表に係る公報の図面に意匠イが表されている場合、意匠ハに係る出願Bは、出願Aに係る国内公表を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶される。
  4. 甲は意匠イについて、日本国とX国を指定締約国としたハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願Aをし、国際登録された。その11月後、乙は意匠ロに類似する意匠ハについて意匠登録出願Bを日本国にした。その翌週に出願Aは国際公表され、国際意匠登録出願として日本国特許庁に係属したが、公知形状に基づいて容易に創作できることを理由に拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、出願Bは、出願Aに係る国際公表を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶される。
  5. 甲は意匠イに係る意匠登録出願Aを日本国にした。その1月後、甲のグループ企業の乙社は、意匠ロに類似する意匠ハについて、日本国とX国を指定締約国としたハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願Bをし、出願Bは国際公表された。その後、出願Aについて意匠登録され、意匠公報が発行された。日本国特許庁の審査に係属中の出願Bについて、乙が出願人を甲へ変更するために、出願Bに係る意匠ハの意匠登録を受ける権利を甲に承継する届出の書面を特許庁長官に提出すれば、出願Bは、出願Aに係る意匠公報を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶されない。

解答・解説

解答

 2

解説

  1. 甲は、意匠イに係る意匠登録出願Aをし、その1月後、甲のグループ企業の乙が意匠ロに係る意匠登録出願Bをした。その後、出願Aについて意匠登録がされて意匠公報が発行された。出願Aと出願Bの創作者が同一の場合、意匠ロに係る出願Bは、意匠イに係る出願Aの意匠公報を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶されない。
    ❌ 意3条の2
    意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。[意3条の2]

  2. 甲は、令和4年1月1日にパリ条約の同盟国のX国へ、意匠イについて、正規かつ最先の意匠登録出願Aをした。乙は、令和4年2月1日に意匠ロに類似する意匠ハについて意匠登録出願Bを日本国にした。甲は、令和4年2月3日に意匠イに係る出願Aを基礎とするパリ条約による優先権の主張を伴う意匠登録出願Cを日本国に行い、出願Cについて意匠公報が発行された。この場合、意匠ハに係る出願Bは、意匠イに係る出願Cの意匠公報を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶される。
    ⭕️ 意3条の2、パリ4条B
    意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。[意3条の2]
    すなわち,A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第三者が取得した権利に関しては,各同盟国の国内法令の定めるところによる。[パリ4条B]

  3. 甲は、特許請求の範囲及び明細書に「容器付冷菓」の発明が記載され、その図面に意匠イが表された特許協力条約(PCT)に基づく国際特許出願Aをした。17月後、乙は意匠ロに類似する「アイスクリーム用容器」の意匠ハに係る意匠登録出願Bを日本国にした。その後、甲は出願Aを国内移行手続し、出願Aは特許法第184条の9に規定する国内公表がされた。出願Aの国内公表に係る公報の図面に意匠イが表されている場合、意匠ハに係る出願Bは、出願Aに係る国内公表を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶される。
    ❌ 意3条の2
    意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。[意3条の2]

  4. 甲は意匠イについて、日本国とX国を指定締約国としたハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願Aをし、国際登録された。その11月後、乙は意匠ロに類似する意匠ハについて意匠登録出願Bを日本国にした。その翌週に出願Aは国際公表され、国際意匠登録出願として日本国特許庁に係属したが、公知形状に基づいて容易に創作できることを理由に拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、出願Bは、出願Aに係る国際公表を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶される。
    ❌ 意3条の2
    意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。[意3条の2]

  5. 甲は意匠イに係る意匠登録出願Aを日本国にした。その1月後、甲のグループ企業の乙社は、意匠ロに類似する意匠ハについて、日本国とX国を指定締約国としたハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願Bをし、出願Bは国際公表された。その後、出願Aについて意匠登録され、意匠公報が発行された。日本国特許庁の審査に係属中の出願Bについて、乙が出願人を甲へ変更するために、出願Bに係る意匠ハの意匠登録を受ける権利を甲に承継する届出の書面を特許庁長官に提出すれば、出願Bは、出願Aに係る意匠公報を根拠に意匠法第3条の2に基づいて拒絶されない。
    ❌ 意3条の2、意60条の11 1項、特34条4項
    意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。[意3条の2]
    国際意匠登録出願についての第十五条第二項において準用する特許法第三十四条第四項の規定の適用については、同項中「相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官」とあるのは、「意匠法第六十条の七第二項に規定する国際事務局」とする。[意60条の11 1項]
    特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない。[特34条4項]

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