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弁理士 意匠 R3-7

 

 意匠法における、先願及び分割出願に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。
 ただし、設問で記載した以外の出願は考慮しないものとする。また、特に文中に示した場合を除き、意匠登録出願は、いかなる優先権の主張も伴わず、秘密意匠に係るものでも、分割又は変更に係るものでも、補正後の意匠についての新出願でも、冒認の出願でもなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされていないものとし、また、名義変更、秘密にする期間の変更は行わないものとし、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく特例を考慮しないものとする。

  1. 甲の意匠イに係る意匠登録出願Aと、乙の意匠ロに係る意匠登録出願Bとが同日にされた。意匠イと意匠ロとは類似しないが、意匠イに類似する意匠が、意匠ロにも類似する場合、甲と乙が意匠法第9条第4項の規定に基づく協議指令を受ける場合はない。
  2. 甲の意匠イに係る意匠登録出願Aと、乙の意匠ロに係る意匠登録出願Bとが同日の出願であって、意匠法第9条第2項に規定する協議が成立せず、出願A、B共に拒絶をすべき旨の査定が確定した。その後、甲が意匠イに類似する意匠ハに係る意匠登録出願Cをした場合、意匠ハについて意匠登録を受けることができる。
  3. 意匠登録出願において、「使用状態を示す参考図」に複数の意匠が記載されていた。この場合、「使用状態を示す参考図」のみに記載された意匠を、意匠法第10条の2に規定する意匠登録出願の分割によって、新たな意匠登録出願とすることはできない。
  4. 甲は、意匠イについて、令和3年(2021年)6月1日に、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく日本国を指定締約国とする国際出願Aをし、その後、甲が国際出願Aの不備を補い、意匠イは、同年6月7日を国際登録の日として国際登録され、同年12月7日に国際公表された。乙は、同年6月3日に、意匠ロについて意匠登録出願Bをした。意匠イと意匠ロが類似する場合、意匠ロに係る出願Bは、意匠イに係る国際出願Aに基づく国際意匠登録出願を理由として拒絶されない。
  5. 甲は、飲食用ナイフ、飲食用フォーク及び飲食用スプーンからなる「一組の飲食用具セット」に係る組物の意匠イについて意匠登録出願Aをした。次に、乙は、「飲食用フォーク」の意匠ロについて意匠登録出願Bをした。その後、出願Aについて、意匠イが組物全体として統一がない旨の拒絶理由の通知がされたので、甲は、組物の意匠イの構成物品である「飲食用フォーク」の意匠ハについて意匠法第10条の2に規定する新たな意匠登録出願Cを適法に行った。意匠ロと意匠ハが類似する場合、出願Cは、出願Bを理由として拒絶されない。

解答・解説

解答

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解説

  1. 甲の意匠イに係る意匠登録出願Aと、乙の意匠ロに係る意匠登録出願Bとが同日にされた。意匠イと意匠ロとは類似しないが、意匠イに類似する意匠が、意匠ロにも類似する場合、甲と乙が意匠法第9条第4項の規定に基づく協議指令を受ける場合はない。
    ⭕️ 意9条2項・4項
    2 同一又は類似の意匠について同日に二以上の意匠登録出願があつたときは、意匠登録出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その意匠について意匠登録を受けることができない。
    4 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を意匠登録出願人に命じなければならない。[意9条2項・4項]

  2. 甲の意匠イに係る意匠登録出願Aと、乙の意匠ロに係る意匠登録出願Bとが同日の出願であって、意匠法第9条第2項に規定する協議が成立せず、出願A、B共に拒絶をすべき旨の査定が確定した。その後、甲が意匠イに類似する意匠ハに係る意匠登録出願Cをした場合、意匠ハについて意匠登録を受けることができる。
    ❌ 意9条3項
    意匠登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その意匠登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その意匠登録出願について前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。[意9条3項]

  3. 意匠登録出願において、「使用状態を示す参考図」に複数の意匠が記載されていた。この場合、「使用状態を示す参考図」のみに記載された意匠を、意匠法第10条の2に規定する意匠登録出願の分割によって、新たな意匠登録出願とすることはできない。
    ⭕️ ピアノ補助ペダル事件


  4. 甲は、意匠イについて、令和3年(2021年)6月1日に、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく日本国を指定締約国とする国際出願Aをし、その後、甲が国際出願Aの不備を補い、意匠イは、同年6月7日を国際登録の日として国際登録され、同年12月7日に国際公表された。乙は、同年6月3日に、意匠ロについて意匠登録出願Bをした。意匠イと意匠ロが類似する場合、意匠ロに係る出願Bは、意匠イに係る国際出願Aに基づく国際意匠登録出願を理由として拒絶されない。
    ⭕️ 意60条の6 1項・3項
    日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす。
    3 第一項(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により意匠登録出願とみなされた国際出願(以下「国際意匠登録出願」という。)に係るジュネーブ改正協定第一条(viii)に規定する国際登録簿(以下「国際登録簿」という。)に記録された次の表の上欄に掲げる事項は、第六条第一項の規定により提出した願書に記載された同表の下欄に掲げる事項とみなす。[意60条の6 1項・3項]

  5. 甲は、飲食用ナイフ、飲食用フォーク及び飲食用スプーンからなる「一組の飲食用具セット」に係る組物の意匠イについて意匠登録出願Aをした。次に、乙は、「飲食用フォーク」の意匠ロについて意匠登録出願Bをした。その後、出願Aについて、意匠イが組物全体として統一がない旨の拒絶理由の通知がされたので、甲は、組物の意匠イの構成物品である「飲食用フォーク」の意匠ハについて意匠法第10条の2に規定する新たな意匠登録出願Cを適法に行った。意匠ロと意匠ハが類似する場合、出願Cは、出願Bを理由として拒絶されない。
    ⭕️ 意10条の2 2項
    前項の規定による意匠登録出願の分割があつたときは、新たな意匠登録出願は、もとの意匠登録出願の時にしたものとみなす。ただし、第四条第三項並びに第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、この限りでない。[意10条の2 2項]

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