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弁理士 意匠 R2-8

 

 甲は、蓋と本体との両方に特徴のある、「蓋」と「シャンプー容器本体」からなる「蓋つきシャンプー容器」の意匠イについて意匠登録出願をし、意匠イについて意匠登録を受けている。次のうち、誤っているものは、どれか。
 ただし、1〜5の内容はそれぞれ独立しており、相互に影響しないものとする。また、特に文中に示した場合を除き、いずれの場合も意匠権について、いかなる無効理由も有さず、通常実施権の設定の裁定を受けないものとし、また、専用実施権の設定は受けておらず、かつ、いかなる者も通常実施権を有していないものとする。

  1. 甲の意匠イの意匠登録出願後かつ登録前に、乙が、意匠イと同一の意匠の「蓋つきシャンプー容器」を業として製造した。この場合、甲は、乙に対して、意匠登録前の業としての製造について補償金の支払いを請求できることがある。
  2. 乙が、甲の意匠イの意匠登録後に、甲の許諾なく、意匠イと同一の意匠の「蓋つきシャンプー容器」に入ったシャンプーの試供品を無料で広く配布した。この場合、甲は、乙に対して、意匠権侵害に基づく差止を請求できることがある。
  3. 乙は、甲の意匠イの意匠登録出願前に、意匠イと同一の「蓋つきシャンプー容器」の立体商標を、シャンプーを指定商品として商標登録出願をして商標登録を受けた。甲はその後に意匠イについて意匠登録を受けても、乙の許諾なく業として意匠イの「蓋つきシャンプー容器」にシャンプーを入れて販売することができない。
  4. 乙が、甲の意匠イの意匠登録後、意匠イのうち「蓋」と同一の意匠の蓋Xを、甲の許諾なく製造した丙から国内で譲り受けて、業として輸出した。乙は、当該輸出時に、蓋Xが、意匠イの「シャンプー容器本体」に取り付けられる蓋であり、意匠イの視覚を通じた美感の創出に不可欠であること、蓋Xの意匠が意匠イのうち「蓋」と同一であること及び蓋Xが意匠イの「シャンプー容器本体」に用いられることを知っていた。この場合、甲は、乙の上記行為に対して、意匠権侵害に基づく差止請求をすることができない。
  5. 乙が、甲の意匠イの意匠登録後、意匠イと同一の意匠のシャンプー容器を研究のために製造した場合、甲は、乙に対して、意匠権侵害に基づく差止請求をすることができない。

解答・解説

解答

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解説

  1. 甲の意匠イの意匠登録出願後かつ登録前に、乙が、意匠イと同一の意匠の「蓋つきシャンプー容器」を業として製造した。この場合、甲は、乙に対して、意匠登録前の業としての製造について補償金の支払いを請求できることがある。
    ❌ 規定なし
    そのような規定はありません。

  2. 乙が、甲の意匠イの意匠登録後に、甲の許諾なく、意匠イと同一の意匠の「蓋つきシャンプー容器」に入ったシャンプーの試供品を無料で広く配布した。この場合、甲は、乙に対して、意匠権侵害に基づく差止を請求できることがある。
    ⭕️ 意23条
    意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。[意23条]

  3. 乙は、甲の意匠イの意匠登録出願前に、意匠イと同一の「蓋つきシャンプー容器」の立体商標を、シャンプーを指定商品として商標登録出願をして商標登録を受けた。甲はその後に意匠イについて意匠登録を受けても、乙の許諾なく業として意匠イの「蓋つきシャンプー容器」にシャンプーを入れて販売することができない。
    ⭕️ 意26条1項
    意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない。[意26条1項]

  4. 乙が、甲の意匠イの意匠登録後、意匠イのうち「蓋」と同一の意匠の蓋Xを、甲の許諾なく製造した丙から国内で譲り受けて、業として輸出した。乙は、当該輸出時に、蓋Xが、意匠イの「シャンプー容器本体」に取り付けられる蓋であり、意匠イの視覚を通じた美感の創出に不可欠であること、蓋Xの意匠が意匠イのうち「蓋」と同一であること及び蓋Xが意匠イの「シャンプー容器本体」に用いられることを知っていた。この場合、甲は、乙の上記行為に対して、意匠権侵害に基づく差止請求をすることができない。
    ⭕️ 意38条2号イ
    次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
    二 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造に用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)であつて当該登録意匠又はこれに類似する意匠の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること及びその物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられることを知りながら、業として行う次のいずれかに該当する行為
    イ 当該製造に用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為[意38条2号イ]

  5. 乙が、甲の意匠イの意匠登録後、意匠イと同一の意匠のシャンプー容器を研究のために製造した場合、甲は、乙に対して、意匠権侵害に基づく差止請求をすることができない。
    ⭕️ 意36条で準用する特69条1項
    特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。[特69条1項]

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