IoTを利用した養殖システムに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
G社は,海上の生け簀の中で良質な養殖魚の育成を支援する,IoTを利用した養殖システム(以下,スマート生け簀という)を開発している。
スマート生け簀の概観を図1に,スマート生け簀のシステム構成を図2に示す。
図1 スマート生け簀の概観
図2 スマート生け簀のシステム構成
スマート生け簀は,網をつるすためのブイに接続された水質センサ,水中ステレオカメラ,残餌検知部,及び給餌部で構成される。給餌部は,海中への餌の投入(以下,給餌という)を行う。残餌検知部は,養殖魚が食べ残して沈んでいく餌(以下,残餌という)を収集する集餌コーン及び残餌センサで構成される。給餌部は,残餌検知部で取得した残餌の量を用いて求めた食べた餌の重量,水質センサの計測データ(以下,水質データという),及び水中ステレオカメラで撮影された動画(以下,動画データという)をサーバに送信する。サーバは,蓄積したデータを基にAIで分析し,与える餌の重量(以下,給餌重量という),及び餌を与える日時(以下,給餌日時という)を決定し,給餌部に送信する。
〔給餌部の動作概要〕
(1)給餌部は,定期的に動画データ及び水質データを受信してフラッシュメモリに保存する。保存した動画データ及び水質データをサーバに送信する。
(2)給餌部は,給餌重量及び給餌日時をサーバから受信する。指示された給餌日時になると,給餌部は,給餌重量を基に,給餌を行う回数(以下,給餌予定回数という),1回当たりの餌の重量を求める。さらに,給餌の終了判断に用いるしきい値を決定し,次の動作を開始する。
・給餌部は,1回目の給餌を開始するとともに,残餌検知部を動作させる。
・残餌は,集餌コーンによって集められる。残餌センサは,通過する残餌を1個ずつカウントし,その値をカウント値とする。カウント方法は,アップカウントとする。
・給餌部は,5分間隔でカウント値を読み込み,単位時間当たりのカウント値(以下,Ct値という)を求める。Ct値がしきい値より少ないときは,養殖魚が餌を食べ続けていると判断する。Ct値がしきい値以上のときは,養殖魚が餌を食べなくなったと判断する。
・給餌部は,Ct値がしきい値より少ないときは,給餌予定回数に達するまで給餌を繰り返す。
・給餌予定回数に到達したとき,又はCt値がしきい値以上のとき,給餌を終了する。終了直前で読み込んだカウント値を,給餌終了時のカウント値とする。
・給餌部は,給餌を行った回数を基に,実際に給餌した餌の重量を求める。求めた値を用いて,食べた餌の重量を求める。ここで,給餌を行う1個の餌の重量は均一とする。
・給餌部は,食べた餌の重量をサーバに送信する。
〔サーバの動作概要〕
サーバは,動画データを基に,養殖魚の大きさ・形状・推定個体数を抽出し,水質データと食べた餌の重量を併せて蓄積する。サーバは,蓄積したデータを基にAIで分析し,良質な養殖魚を育成する上で適した給餌重量及び給餌日時を決定して,給餌部に送信する。
〔装置の機能〕
スマート生け簀の構成要素の概要を表1に示す。
構成要素名 | 機能概要 |
給飼部 | ・給餌重量及び給餌日時をサーバから受信する。 ・給餌重量を基に,給餌予定回数,1回当たりの餌の重量を求める。 ・給餌の終了判断に用いるしきい値を決定し,給餌を行う。 ・動画データ及び水質データを受信すると,フラッシュメモリに保存し,サーバに送信する。 ・給餌終了時のカウント値を用いて,食べた餌の重量を求め,サーバに送信する。 |
残餌検知部 | ・集餌コーンで残餌を収集し,残餌センサのカウンタで残餌を1個ずつカウントする。 |
水中ステレオカメラ | ・養殖魚を定期的に撮影し,動画データとして給餌部に送信する。 |
水質センサ | 水温,海中の酸素濃度,塩分濃度を計測し,水質データとして給餌部に送信する。 |
サーバ | ・動画データを基に,養殖魚の大きさ・形状・推定個体数を抽出する。 ・水質データ,食べた餌の重量,及び養殖魚の大きさ・形状・推定個体数を蓄積する。 ・蓄積したデータを基にAIで分析し,給餌重量及び給餌日時を決定して給餌部に送信する。 |
給餌日時になったときの給餌処理フローを図3に示す。
図3 給餌処理フロー
出典:令和3年度秋期 問7
設問1 スマート生け簀の動作について,(1),(2)に答えよ。
(1)サーバは良質な養殖魚を育成するために,AIで分析を行って養殖魚を管理している。AIの分析に用いるデータ中には,水質データ,食べた餌の重量,養殖魚の大きさ・形状・推定個体数がある。これらのデータをサーバに蓄積するときに付加すべきデータを答えよ。
解答・解説
解答例
準備中
解説
(2)給餌部が給餌を開始してから,カウント値を読み込むまでに単位時間待つ必要がある。その理由を30字以内で述べよ。
解答・解説
解答例
準備中
解説
設問2 水中ステレオカメラの動画は,左右それぞれ20フレーム/秒であり,1フレームは800×600ピクセルの画素数で,1画素当たりのデータ長は24ビットである。1回当たり2分間の動画を撮影し,給餌部のフラッシュメモリに保存する。この動画データについて,(1),(2)に答えよ。ここで,1Gバイト=10⁹バイトとする。
(1)撮影1回当たりの動画データのサイズは,何Gバイトか。答えは小数第1位を四捨五入して,整数で求めよ。
解答・解説
解答例
準備中
解説
(2)動画データを給餌部のフラッシュメモリに保存するために,水中ステレオカメラ内で行う必要がある処理は何か。ここで,給餌部のフラッシュメモリの容量は2Gバイトとする。
解答・解説
解答例
準備中
解説
設問3 給餌処理フローについて,(1),(2)に答えよ。
(1)図3中の a , b に入れる適切な字句を答えよ。
解答・解説
解答例
準備中
解説
(2)養殖魚が食べた餌の重量の算出方法について,次の式中の c 〜 f に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
食べた餌の重量 = ( c × d ) − ( e × f )
解答群
- Ctの値
- 1回当たりの餌の重量
- 1個の餌の重量
- 給餌開始時のカウント値
- 給餌終了時のカウント値
- 給飼重量
- 給餌予定回数
- 給餌を行った回数
解答・解説
解答例
準備中
解説
IPA公開情報
出題趣旨
食料の安定供給を目指し,農業,畜産業及び飼育漁業において,IoT や AI を導入して良質な食料を安定的に 確保するための試みが始まっている。
本問では,IoT を利用して良質な養殖魚を育成し,安定供給するシステムを題材に,システムの仕様を把握する能力,仕様に応じたソフトウェア設計の能力を問う。
採点講評
問 7 では,IoT を利用した良質な養殖魚を育成して安定供給するためのスマート生け簀を題材に,仕様の把握,ソフトウェア設計について出題した。全体として正答率は平均的であった。
設問 1(2)は,正答率がやや低かった。餌を投入してから残餌センサが餌を検出するまでの餌の動きを考慮して正答を導き出してほしかった。システムの動作を正確に理解する能力を身に付けてほしい。 設問 2(1)は,正答率が低かった。単眼のカメラが 2 台あるステレオカメラを用いていたが,カメラ 1 台分しか計算していない誤答が散見された。設問で与えられた条件を正しく理解して計算するよう心掛けてもらいたい。
設問 3(1)は,正答率が平均的であった。給餌日時における給餌処理フローを完成させる問題であったが,本文で説明していない用語や機能の解答が散見された。本文で述べられた機能や処理についてよく理解した上で解答してほしい。